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長い時間一緒にいる明里にごまかし続けることは難しいかもしれない。
近い将来自分の恋愛対象が男であることがバレてしまうだろう。

そうなる前に明里にだけは相談しておいたほうがいいだろうか……。
真剣にそんなことを考えはじめたときだった。

昼休憩時間になったとき、明里が燐音に近づいてきた。
『燐音、ちょっと話があるんだけど』

『なに?』
箸を置いて明里へ視線を向けると、明里はいつもよりもすごく真剣な顔つきをしていた。

なにか大切な話だろうか。
最近明里のお父さんの体調がよくないと聞いていたから、それについてかもしれない。

『ここじゃダメ。今日の放課後時間をちょうだい』
それは燐音が告白を受ける時によく言われる言葉だった。

ときには似たような文言が書かれた手紙が机の中に入っていたり、下駄箱に入れられたりもする。
でも明里に限って告白はないはずだ。

明里が告白するなら別に学校じゃなくてもいい。
『わかった』

燐音は素直に頷いて、昼食の続きを再開したのだった。