きっと、他の男子生徒に告白していたらその恋は実ったんじゃないかと思うほどに。
こんな人が自分の恋人だったら、燐音だって自慢して回りたくなりそうだった。

だけど、付き合うことはできなかった。
『ごめんなさい』
燐音は深くうなだれるように頭を下げて断った。

それしか自分にできることはなかったから。

先輩は大きな目に涙をためて『そっか。そうだよね。霞くん、モテるもんね』と、必死に笑顔になって、そして『じゃ、バイバイ』と手を振って歩き出した。

1人で告白する勇気がなかったのだろう。
先輩を追いかけるようにしてふたりの女子生徒が物陰から姿を現して、先輩を真ん中にして歩き出した。

先輩は途中で涙腺が崩壊してしまったようで、小さな鳴き声がここにまで聞こえてきた。
友人に背中を擦られながら歩くその姿はすごく小さく見えたのだった。

きっと、形だけでもカップルになることはできる。

そうすれば、本気で好きになることもできるかもしれない。
そんな風に考えたこともあった。