目が離せなくなるのも、胸がドキドキして止まらないのも。
『僕、この芸能人のことすごく好きなんだ。ドキドキする』

テレビに出演した男性芸能人を指差して素直な感想を伝えたとき、隣にいた友人が怪訝そうな顔をした。

『ドキドキする? それって恋じゃねぇ?』
その友人だって本気で言ったわけじゃなかったと思う。

だけど恋と言われて体に電撃が走る感覚がした。
これが恋。

そうなのかもしれない。
だけど相手は男性芸能人だ。

男性芸能人に恋をするということは……僕の恋愛対象は男性ということ?
そう気が付いた後に自分が友人とどんな会話を交わしたのか覚えていない。

たぶん『恋なんかじゃない』と笑いながら否定してやりすごしたんだと思う。
だけどその日から燐音は自分が同性ばかりを目で追いかけていることに気が付いた。

学校の行き帰りでも、教室内でも。