燐音の初恋は中学2年生のころだった。

少し遅いくらいだけれど、それまでに燐音はまわりの男子と自分は違うのかもしれないと感じることが沢山あって、恋愛にたいして消極的になっていたところがあった。

『燐音! これ見てみろよ!』
教室で友人がこっそりグラビアアイドルの雑誌を広げて、燐音を手招きした。

燐音は興味のあるふりをして近づき、小さな生地の水着を着ている女の子の写真を見て『すっげー!』と笑う。

女の子の格好はほとんど裸同然で確かにすごいものだったけれど、少しも心が動かされることはなかった。

小学校高学年くらいから、こういうことが頻繁に起こりはじめた。
他の男子生徒が興奮するものに興奮できない。

胸がざわつくようなこともなければ、体がカッと熱くなるようなこともない。
燐音が胸を高鳴らせて体が熱くなるのは、決まって男性タレントや男性アイドルを見たときだった。

最初はそれが同性に対する憧れだと思っていた。