☆☆☆

それからしばらくして部活動を終えた詠斗が戻ってきたとき、子猫はまだ燐音の膝の上にいた。
「ただいま。随分仲良くなったみたいだな」

体操着姿の詠斗はほほえましい光景に頬を緩めたが、燐音のほうは引きつった笑みを浮かべた。
「それが、帰ってきてからずっとこの体勢なんだ」

子猫を起こすのが可愛そうであぐらをかいたまま動けなくなってしまった両足は、今や感覚がなくなるほどにしびれきっていた。
「おいおい。大丈夫か?」

詠斗は心配しつつも呆れ顔だ。
「だって、動けなくて」

「それならちょっとどいてもらえばいいだろ」
詠斗が両手で子猫を抱き上げると、目を覚ました子猫が不服そうな鳴き声を上げた。

けれど床に下ろされると自分からスタスタと歩いてひざ掛け毛布の中へと戻っていく。
大変なのは燐音の方だ。