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まさかこんなことになるなんて。
なんのためにひとり部屋にしてもらったのかわからなくなる。

雨漏りの修理って、一体いつまでかかるんだ?
いつまでこいつはこの部屋にいるんだ?

ぐるぐるとそんなことを考えながら、今日配られたばかりの教科書に視線を落とす。

内容は全く頭に入ってきていないし、習っていない箇所なのでどれだけ読み込んだって理解はできない。
でもこうしていないと視界の隅っこに横で本を読んでいる詠斗の姿が映って、気になって仕方ないのだ。

「なぁ燐音、この漫画すっげぇ面白くってさ」
一冊読み終えた詠斗が顔を上げて声をかけてくる。

「燐音!?」
突然の呼び捨てに驚き、声が裏返ってしまう。

「あ、悪い。呼び捨て嫌なんだっけ?」
「い、いや、別に……」

しどろもどろになって顔をそむける。
「じゃ、俺のことも詠斗って呼んでよ」