それが、飼い主が窓を開けてたタイミングで逃げ出した可能性がある。
燐音の家の飼い猫も外に出かけるのが大好きな猫で、1日中戻ってこなくて心配したことが何度もあった。

「この子は小さいから自力で家に帰れなくなったのかもしれないし……」
燐音が手の中に子猫を抱きしめてつぶやく。

腕の中で子猫は小刻みに震えていた。
「それなら警察に届けておくか」

「うん。そうすれば飼い主さんも安心だと思う」
燐音は子猫を抱っこしたまま立ち上がり、詠斗と共に近くの交番へと向かったのだった。

そこにいたおまわりさんは丁寧に接してくれたけれど、飼い主さんが現れるまでに保護しておくことは難しいということだった。

「どうしよう。また公園に戻すわけにはいかないし」
燐音が子猫をギュッと抱きしめると、子猫は目を細めてゴロゴロと喉を鳴らした。

ずっと抱っこしているから燐音にはすっかり慣れてきたみたいだ。
燐音としても子猫を離し難いのだろう、なにかを期待するような瞳を詠斗へ向けている。

詠斗は苦笑いを浮かべて「わかったよ。飼い主が現れるまで寮で飼うことにしよう。ただし、バレないように気をつけないとな」と、言ったのだった。