でも、ふたりの堂々とした態度を見て文句を言う生徒もいないから、本当に羨ましいと感じる。
そして次の水曜日。

前回放課後デートをしたのがよほど楽しかったのか、詠斗は少し遠回りをして帰ろうと燐音に提案してきた。
燐音もそれを快諾して、ふたりで寮とは別方向へと歩き出す。

「いい天気だなぁ」
詠斗が大きく伸びをしてつぶやく。

もうすぐ夏が訪れる爽やかな熱気がふたりを包み込んでいる。
夏休みにはなにをしようか。

詠斗は実家に帰ったりするのかな。
少し気が早いけれどそんなことを考えて、公園へと足を踏み入れたときだった。

ミャア。
と、公園を囲むように植えられている木々の茂みの奥から鳴き声が聞こえてきて、同時に立ち止まった。

声がシた方へ歩み寄ってみれば、長い草がカサカサと揺れてその奥から小さくて真っ白な猫が姿を見せた。