中は思いの外広くてふたりで撮影する分には十分すぎるほどスペースがある。

コインを投入し、背景などを適当に選んで撮影タイムに突入すると、画面上でポーズ指定してくれるので悩むことなくハートマークを作ったり、ポーズを決めたりすることができた。

そして最後の1枚になったとき。
《ほっぺにチュー》

と機械音声に言われて「な、なんだよそれ」と、燐音は苦笑いを浮かべる。
さすがにそれは撮影できないから普通にピースサインをしようとした、そのときだった。

詠斗に体を引き寄せられたかと思うと、頬にではなく唇にキスされていたのだ。
角度を変えた濃密なキスが繰り広げられて、酸欠状態になったとき、ようやく唇が離された。

「なにし……っ」
よりによってプリクラを撮っているときにキスしてくるなんて!

燐音の顔は耳まで真っ赤に染まり、口元を両手でおおう。
「記念写真だよ。誰にも見せないから、安心して」

いたずらっ子のように笑う詠斗はキスプリクラを大切に財布の中にしまったのだった。