燐音と詠斗が付き合っているかもしれないという噂は、きっとそうなのだろうという確信に変わり、それはだんだんと受け入れられて行っていた。
「なんか、いいのかな」
学校までの短い距離を歩きながら燐音はつぶやく。
隣には当然のように詠斗が歩いていた。
「なにが?」
「こんなに幸せで」
ふたりの関係を嫌う生徒も中にはいたけれど、おおかた好印象を受ける反応が多くて、逆に戸惑ってしまう。
暗い高校生活を望んでいたはずなのに、今の燐音は真逆の立場にいた。
「別にいいだろ」
詠斗が燐音の手を力強く握りしめてくる。
朝からスキンシップが多くて燐音の心臓は高鳴りっぱなしだ。
「でも感謝するとすれば、今はあいつらにかな」
詠斗がそう言って前を歩く二人組みを見つめた。
京介と克也のふたりだ。