「それはまぁ、どうせ同じ部屋になったんだし、友達になる他ないだろうなぁと思ってさ」
それがこんな関係になるとは、あのときには思ってもいなかったのかもしれない。

詠斗がそっと手を伸ばして燐音のメガネに触れた。
燐音は咄嗟にその手を振り払おうとしたけれど、グッと拳を握りしめて我慢した。

「これも、もう必要なくなる日が近いんじゃないか?」
少しだけメガネに触れた指先が、そのままスッと下ろされた。

「その場合、僕たちの関係は終わり?」
「そんなわけないだろ。俺たちはもう友達以上の関係なんだから」

それを聞いて安心した。
燐音が根暗キャラをやめたら、最初に秘密の関係も消滅してしまうと懸念していたのだ。

でも、その心配は杞憂だったみたいだ。
「燐音がどんな姿だろうと関係ない。ずっとずっと、愛してる」

それは燐音にだけ聞こえるように囁かれた甘い言葉だった。