「うわぁ、この部屋狭いなぁ」
詠斗は部屋に入るやいなや笑いながらそう言った。

嫌なら今すぐ出ていってもらって構わないのだけれど、もちろん燐音がそんなことを言えるわけがない。

「ひとり部屋だから」
と、暗い声色で返事をすることが精一杯だ。

すでに部屋着に着替えている詠斗は有名スポーツブランドのシャツとハーフパンツ姿で、それだけでもなんだかすごく絵になっている。

ハーフパンツから伸びている足はスラリと真っ直ぐで長く、ほどよく筋肉がついていて美しい。
思わずマジマジと見てしまいそうになり、燐音は慌てて視線をそらせた。

「お、お前の荷物は?」

黙っていると余計なことを考えてしまいそうなので、そう聞くと詠斗は「必要な分だけ持ってきた」と、紙袋を見せてきた。

中には教科書とちょっとした着替えが入っているみたいだ。
他の荷物は前の部屋のクローゼットが無事だったので、置いてきたという。

必要になればまた取りに戻るみたいだ。