克也が言い、ふたりは同時に頭を下げた。
廊下を行き交う生徒たちが何事かとこちらを見てくるので燐音は慌てて「僕は大丈夫だから」と、答えた。

あの時は本当に怖かったし、今でも許せない部分はある。
詠斗が助けてくれなければどうなっていたのかもわからない。

けれど、あの出来事があったからこそ付き合うことができたとも感じている。
詠斗は僕にとってのスーパーマンだ。

「でも、今日は詠斗がすごく落ち着いてるな。なにかあったのか?」
京介が気を取り直すようにそう聞いてきた。

普段の詠斗なら今でも燐音にベッタリなはずだからだ。
「詠斗の愛情表現がすごく過剰で……それで、控えてもらうように言ったんだ」

照れながらそう言うと克也と京介が声を上げて笑い出した。
「確かに! 詠斗の愛情表現はちょっと過激すぎるよなぁ」

「わかる! 中学のときだって……」
そこまで言って克也がしまったという顔になり、押し黙ってしまった。

中学時代の詠斗?
部活動でのことはよく聞いていたけれど、恋愛については聞いたことがなかった。

詠斗のことだからかなりモテたんじゃないだろうか。