燐音の気持ちを気にしたためか、翌日の学校では詠斗は少し距離を置いて接するようになっていた。
少なくても燐音が少し教室から移動するたびに後ろをついてまわるようなことはなくなった。

これなら自分が目立つこともないだろうとホッとすると同時に、ちょっとだけ寂しい気がしているのは内緒だ。
「なぁ、おい」

燐音がひとりでトイレに立った時を見計らったのか、声をかけてきたのは京介と克也のふたりだった。
このふたりにはいい思い出のない燐音は警戒心をむき出しにして睨みつけた。

自分の素顔だってバレてしまっているから、なにをされるかわかったものではない。
「なにか用?」

会話だってしたくはなかったけれど、呼び止められて立ち止まってしまったのだから仕方ない。
燐音は廊下を行き交う生徒たちを意識しつつそう聞いた。

沢山の生徒がいる場所なら、まさかあんな展開にもならないだろう。
「親睦会のときのこと、ちゃんと謝ってなかったと思って」

ぽりぽりと頭をかきながら克也が言う。