汗で額に張り付いた前髪を、詠斗が丁寧になでてくれる。
「夢……」

ちらりと詠斗へ視線を向けて、それから勢いよくその体に抱きついた。
驚いた詠斗が一瞬身を後ろにそらしたけれど、すぐにたくましい両腕で抱きしめてくれる。

「もう大丈夫。俺がいるから」
「うん……。本当に助けてくれたんだな」

昨日詠斗はどんなときでも助けてくれると言った。
あれは嘘じゃなかったんだ。

夢の中にいても、燐音が叫び声を上げれば詠斗は必ず来てくれる。
「当たり前だろ。燐音は俺にとって特別な存在なんだから」

昨日あんな失言をしたばかりなのに、詠斗は優しくささやきかけてくれる。
それが嬉しくて、胸が苦しくなった。

「詠斗……昨日はごめん。僕、恋愛は自由だってわかってたのに」
言いながら声が引きつり、涙が出そうになった。

自分たちの恋を自分たちで否定していちゃいけない。
まわりがなんと言おうと、この気持ちは本物なんだから。
「俺も、大人げないことして燐音を傷つけた。ごめん」