でも今の詠斗になにを言っても聞く耳を持ってもらえる気がしなくて「わかった」と、ひとりで部屋を出たのだった。

広い食堂の奥でひとりぽつんと座って食べる夕飯はすごく味気ないものになってしまった。
大好物のカレーだったけれど、あまり味を感じられない。

燐音がカレーを半分くらい食べ終えたタイミングで詠斗が食堂へ入ってきたけれど、目も合わせてくれなかった。
なんだよ……。

と、腹の中でむくれて横目で見ていると、詠斗は他の友人の隣に座って食事をはじめた。
それも時々楽しそうに笑い声を上げている。

なんだよあれ!
ごく普通の夕飯風景かもしれないけれど、燐音の胸にはモヤモヤが広がっていく。

まるで見せびらかしているような詠斗の態度が気に入らない。

燐音は残っているカレーをすべて口の中に詰め込んでろくに咀嚼もせずに飲み込むと、大きな音を立てて椅子を引き、立ち上がって皿をカウンターへと運んだ。

そのまま詠斗の方を見ることなく、部屋へと戻っていったのだった。
その日の夜は気まずいままふたりの時間が流れていった。