つい詠斗のペースに乗せられてしまいそうになって燐音は強く咳払いをした。
「とにかくさ、僕たちの関係は普通じゃないんだから、あまりくっつかないでほしいんだ」

「普通じゃない?」
詠斗が眉間に深いシワを寄せて聞き返してきた。

それを見て今のは失言だったと気がつく。
恋愛の形は人それぞれで、自由であっていいはずだった。

「いや、その……」
自分の失言にしどろもどろになって頭をかく。

どう説明すれば詠斗に伝わるのかわからない。
そう思っている間に詠斗は燐音から視線をそらして、スマホゲームを再開させてしまった。

結局気持ちをうまく伝えることができずに、時間だけが過ぎていったのだった。
「詠斗、ご飯行こう?」

夕飯の時間になって誘っても詠斗は漫画を広げたままで顔をあげなかった。
普段なら、燐音が誘えばしっぽを振ってついてくるのに、今日は見向きもしない。

「先、言ってて」
短く言われて燐音はキュッと唇を引き結んだ。

さっきの失言を気にしていることは明らかだ。