「それって、キスしてもいいってこと?」
聞かれて燐音はコクコクと頷く。

今にも頭が沸騰して倒れてしまいそうなのに、詠斗はじらすようにそっと体を寄せてきた。
「じゃあ、遠慮なく」

息がかかるほどの距離でそう言われた後、チュッと小鳥みたいなキスがふってきた。
ほんの一瞬触れるだけのキスでも、柔らかくて温かいのが伝わってくる。

けれどどこか物足りなさを感じて燐音はゆっくりと目を開き、不服そうに頬を膨らませた。
「どうした? なにか言いたそうな顔してるけど?」

「別に、なにも」
これ以上遊ばれるのは嫌でそっぽをむく。

だけど心は詠斗の唇をもっともっとと求めている。
そのじれったさに体の芯がカッと熱を帯びた。

「嘘つけ」
詠斗がそう呟いた次の瞬間、今度はしっかりと唇に唇が押し当てられていた。

互いの呼吸音がしっかりと聞こえてきて、湿り気を帯びた唇の味までわかってしまいそうだ。
しばらくの間そうして互いの唇を堪能するように楽しんだ後、詠斗はスッと身を離した。

詠斗が離れた後も燐音はぼーっとしてその場に立ち尽くす。
頭の芯からとろけてしまったような表情で詠斗を見つめた。

「今度はこれくらいじゃすまないから」
詠斗はまた意地悪な笑みを浮かべて、そう宣言したのだった。