昨日の雨が嘘のようによく晴れた空の下、いくつもの紺色の制服が校門をくぐって大塚男子高校へと吸い込まれていく。
その中にやけに猫背でブレザーを制服のズボンの中にインしている生徒がいた。

髪の毛はボサボサに逆だっていて、分厚い眼鏡と長い前髪のせいで表情が見えない。

後ろから歩いてきた生徒が彼を追い越すたびに一旦ふり向き、そして友人らとこそこそいいあいながら早足になって逃げるように校舎へと向かう。

明らかに周りから浮いている彼は、だけどそんなことを気にする様子もなく、新入生を歓迎している体育館へと向かった。
大塚男子高校の体育館の扉は大きく開かれていたけれど、中に入った途端にムワッとした空気に包み込まれた。

男子特有の汗臭さと、体が大きいための威圧感で思わず一旦足を止めてしまう。
気を取り直して開いているパイプ椅子を見つけて座り、その横に荷物をおろした。

周りを見ると自分と同じ新入生が続々と集まってきていて、その保護者の姿もチラホラと見える。

椅子に座っても直らない猫背のまま、校長がステージに立って入学の祝の言葉を長々を話すのを、ジッと聞いていると、時々笑い合う声やひそひそ話が聞こえてくる。

みんなすでに友達をみつけたのか、それとも中学から仲のいいもの同士を見つけたのかもしれない。