俺は大きく息をつく……。胸の奥で複雑な感情が渦巻いていた。
そっと隣に腰を下ろし、優しく声をかける。
「どうしたの? いきなり……」
「……」
うつむいたまま動かないドロシー。その沈黙が、胸に重く圧し掛かかる。
「ちょっと飲みすぎちゃったかな? 今日はハイペースだったし……。レヴィアとか本当にオカシイよね」
軽く冗談を交えながら、彼女の心を解きほぐそうとする。
「王女様……放っておいちゃダメじゃない……」
ドロシーが小声でつぶやく。その声には、かすかな嫉妬の色が混ざっているように感じられた。
「ドロシーを放ってもおけないよ」
俺の言葉に、ドロシーの肩がわずかに震えた。
「不満……無いんでしょ? 良かったじゃない。王国一の美貌、羨望の的だわ」
その言葉には、自分を卑下するような響きがあった。
「あれは言葉のアヤだって」
必死に弁解する俺。しかし、ドロシーの心の奥底にある不安は、簡単には消えそうになかった。
「私なんて放っておいて下行きなさいよ!」
突如として強い口調で言い放つと、俺のことをドンと押す。
その声に、悲痛な響きを感じる。
俺はドロシーの小さな手を優しく包み込むように取った。
「俺にとって……一番大切なのはドロシーなんだ。ドロシーおいて下なんて行けないよ」
「嘘! 身寄りのない孤児と王族、比べるまでもないわ!」
ドロシーはギュッと目をつぶって言い放つ。
俺は大きくため息をつく――――。
こんな時、女性経験の浅い自分にはかける言葉が見つからない。
「なぁ、ドロシー……」
そう言ってはみたが、続く言葉がどうしても出てこなかった。
俺は頭をかきむしる。
くぅぅぅ……。
「俺は不器用な人間だから上手く言葉にできない。でも、今の俺がいるのはドロシーのおかげなんだよ」
「私なんて何もやってないわ……」
「俺が最初の剣を研いでいた時、ドロシーが古銭を使ってすごい発見をしてくれたじゃない? あれが無かったら今の俺はないんだよ。まさにドロシーは俺にとって幸運の女神、身分なんてどうでもいいんだ。ドロシーは女神、輝いているんだよ」
「……。本当?」
恐る恐る顔を上げるドロシー。その瞳には、縋るような光が灯っていた。
「本当さ、そうでなければ追いかけてなんて来ないだろ?」
俺はキュッと手を握り、ドロシーに微笑みかける。
ドロシーは涙をいっぱいにたたえた目で俺を見つめた。透き通るような肌が月明かりに照らされ、その姿は妖精のような美しさを放っている。
綺麗だ……。深い愛おしさが胸の奥底から湧き上がってくる。
俺はそっと頭をなでた。ドロシーの体が僅かに震える。
次の瞬間、いきなりドロシーが抱き着いてくると、くちびるを重ねてきた――――。
突然の行動にテンパってしまって固まってしまう俺。
しかし、その熱く情熱的な舌の動きに、俺も自然と応えてしまう。
甘い吐息を吐きながら俺を求めてくるドロシー。その仕草には、初々しさと大胆さが同居していた。
負けじと俺も舌を絡め、手は彼女の背中をまさぐる。その細い背中からは、想像以上の熱が伝わってくる。
月の青い光の中で俺たちは舌を絡め合わせ、しばらくお互いをむさぼった……。時間の感覚が失われ、ただ二人の存在だけが世界の全てのように感じられた。
「うふふ……ユータ……好き」
くちびるを離すと、ドロシーは俺をギュッと抱きしめる。その声には、幸福感と安堵が溢れていた。
俺はドロシーを抱きしめ、豊かな胸のふくらみから熱い体温を感じる。心臓がドクドクと早打ちし、このまま押し倒してしまいたい衝動にかられた。全身の血が沸き立つような感覚に包まれる。
しかし……このまま行為に及ぶわけにもいかない。理性が必死に欲望を抑え込もうとする。
くぅぅぅ……。
俺が激しく欲望と戦っていると……、スースーと寝息が聞こえてくる。どうやら寝てしまったようだ。よく考えたら、ドロシーは飲み過ぎなのだ。
ふぅっと大きくため息をつき、じっとドロシーを見つめる。
その寝顔は、まるで天使のように穏やかで美しかった。
俺はホッとしつつ……、「くぅっ!」っとこぶしを握って宙を仰ぐ。
このやりきれない思いをどうしたらいいのか、持てあましていた。欲望と理性の間で揺れ動く心を、必死に落ち着かせようと俺はあがくしかない。
ドロシーをそっとベッドに横たえ、毛布を掛ける。
幸せそうな顔をしながら寝ているドロシーをしばらく見つめた――――。
「おやすみ……」
俺はそっと頬にキスをすると、俺は下へと降りて行った。階段を下りる足取りは重く、複雑な思いを抱えたまま、再び宴の場へと戻っていくのだった。
そっと隣に腰を下ろし、優しく声をかける。
「どうしたの? いきなり……」
「……」
うつむいたまま動かないドロシー。その沈黙が、胸に重く圧し掛かかる。
「ちょっと飲みすぎちゃったかな? 今日はハイペースだったし……。レヴィアとか本当にオカシイよね」
軽く冗談を交えながら、彼女の心を解きほぐそうとする。
「王女様……放っておいちゃダメじゃない……」
ドロシーが小声でつぶやく。その声には、かすかな嫉妬の色が混ざっているように感じられた。
「ドロシーを放ってもおけないよ」
俺の言葉に、ドロシーの肩がわずかに震えた。
「不満……無いんでしょ? 良かったじゃない。王国一の美貌、羨望の的だわ」
その言葉には、自分を卑下するような響きがあった。
「あれは言葉のアヤだって」
必死に弁解する俺。しかし、ドロシーの心の奥底にある不安は、簡単には消えそうになかった。
「私なんて放っておいて下行きなさいよ!」
突如として強い口調で言い放つと、俺のことをドンと押す。
その声に、悲痛な響きを感じる。
俺はドロシーの小さな手を優しく包み込むように取った。
「俺にとって……一番大切なのはドロシーなんだ。ドロシーおいて下なんて行けないよ」
「嘘! 身寄りのない孤児と王族、比べるまでもないわ!」
ドロシーはギュッと目をつぶって言い放つ。
俺は大きくため息をつく――――。
こんな時、女性経験の浅い自分にはかける言葉が見つからない。
「なぁ、ドロシー……」
そう言ってはみたが、続く言葉がどうしても出てこなかった。
俺は頭をかきむしる。
くぅぅぅ……。
「俺は不器用な人間だから上手く言葉にできない。でも、今の俺がいるのはドロシーのおかげなんだよ」
「私なんて何もやってないわ……」
「俺が最初の剣を研いでいた時、ドロシーが古銭を使ってすごい発見をしてくれたじゃない? あれが無かったら今の俺はないんだよ。まさにドロシーは俺にとって幸運の女神、身分なんてどうでもいいんだ。ドロシーは女神、輝いているんだよ」
「……。本当?」
恐る恐る顔を上げるドロシー。その瞳には、縋るような光が灯っていた。
「本当さ、そうでなければ追いかけてなんて来ないだろ?」
俺はキュッと手を握り、ドロシーに微笑みかける。
ドロシーは涙をいっぱいにたたえた目で俺を見つめた。透き通るような肌が月明かりに照らされ、その姿は妖精のような美しさを放っている。
綺麗だ……。深い愛おしさが胸の奥底から湧き上がってくる。
俺はそっと頭をなでた。ドロシーの体が僅かに震える。
次の瞬間、いきなりドロシーが抱き着いてくると、くちびるを重ねてきた――――。
突然の行動にテンパってしまって固まってしまう俺。
しかし、その熱く情熱的な舌の動きに、俺も自然と応えてしまう。
甘い吐息を吐きながら俺を求めてくるドロシー。その仕草には、初々しさと大胆さが同居していた。
負けじと俺も舌を絡め、手は彼女の背中をまさぐる。その細い背中からは、想像以上の熱が伝わってくる。
月の青い光の中で俺たちは舌を絡め合わせ、しばらくお互いをむさぼった……。時間の感覚が失われ、ただ二人の存在だけが世界の全てのように感じられた。
「うふふ……ユータ……好き」
くちびるを離すと、ドロシーは俺をギュッと抱きしめる。その声には、幸福感と安堵が溢れていた。
俺はドロシーを抱きしめ、豊かな胸のふくらみから熱い体温を感じる。心臓がドクドクと早打ちし、このまま押し倒してしまいたい衝動にかられた。全身の血が沸き立つような感覚に包まれる。
しかし……このまま行為に及ぶわけにもいかない。理性が必死に欲望を抑え込もうとする。
くぅぅぅ……。
俺が激しく欲望と戦っていると……、スースーと寝息が聞こえてくる。どうやら寝てしまったようだ。よく考えたら、ドロシーは飲み過ぎなのだ。
ふぅっと大きくため息をつき、じっとドロシーを見つめる。
その寝顔は、まるで天使のように穏やかで美しかった。
俺はホッとしつつ……、「くぅっ!」っとこぶしを握って宙を仰ぐ。
このやりきれない思いをどうしたらいいのか、持てあましていた。欲望と理性の間で揺れ動く心を、必死に落ち着かせようと俺はあがくしかない。
ドロシーをそっとベッドに横たえ、毛布を掛ける。
幸せそうな顔をしながら寝ているドロシーをしばらく見つめた――――。
「おやすみ……」
俺はそっと頬にキスをすると、俺は下へと降りて行った。階段を下りる足取りは重く、複雑な思いを抱えたまま、再び宴の場へと戻っていくのだった。