ガラスカバーの向こうで横たわるユータの安らかな寝顔。その姿に胸が締め付けられる。ドロシーはそっと指先でガラスカバーをなでた――――。
震える瞬きの向こうで、想いが溢れそうになる。
あとどれくらいで帰ってくるのかは分からない。だが、一分一秒でも引き延ばす。それが今できる自分の全てだった。
ドロシーは深く息を吐き出し、覚悟を固める。
「私、がんばる……ね」
囁くような声で告げ、キュッと口を結ぶと小さな拳をブンブンと振った。
席に戻ったドロシーは、声に力を込めて告げる。
「えーとですね……。レヴィア様は今、お忙しい……という事なんですが……」
「何が忙しいだ! ならこのままぶち壊すぞ!」
絶体絶命の危機。胃を抉るような痛みに耐えながら、ドロシーは深く息を吸った。
「ヌチ・ギさんは戦乙女さん作ったり、すごい賢い方ですよね?」
ドロシーは頑張って優しげな口調でにこやかに声をかける。
「いきなり……何だ?」
「私、とーってもすごいって思うんです」
「ふん! 褒めても何も出んぞ!」
「でも、私、とても不思議なんです」
「……、何が……言いたい?」
ヌチ・ギの表情が怪訝に歪む。
「ヌチ・ギさんはこの世界を火の海にするって言ってましたね」
「それがどうした?」
「そ、それは……、すごい頭悪い人のやり方なんですよね」
ドロシーは心臓が口から出るような思いで、いまだかつて口にしたことのないような挑発に踏み切った。
「……」
ヌチ・ギはただの鑑賞用の小娘だと見下していたドロシーから挑発されたことに、頭が追い付いて行かなかった。
「だって本当に賢かったら人一人殺さず、この世界を活性化できるはずですから」
全力で作り笑いをするドロシー。
「知った風な口を利くな!」
ヌチ・ギは怒りに震えた。しかし、その奥に僅かな動揺が見える。ドロシーはそれを見逃さなかった。
「つまり……。活性化というのは口実に過ぎないんです。単に戦乙女さんたちで人殺しを楽しみたいんです」
ヌチ・ギは黙り込み、憤怒の色を深めていく。
「私、あなたに捕まって戦乙女さんたちのように操られそうになったから良く分かるんです。戦乙女さんは皆、心では泣いてますよ」
「だったら何だ! お前が止められるのか? ただの小娘が! もう一度裸にして吊るしてやる!!」
ヌチ・ギの咆哮が、火口に響き渡る。
時間稼ぎももう限界だった。ドロシーは覚悟を決めた――――。
「戦乙女さん達、辛いですよね。人殺しの道具にされて、心が引き裂かれそうですよね……。うっ……うっ……」
声が嗚咽に変わり、ドロシーの頬を熱い涙が伝う。この世界の理不尽さが、胸の奥を抉っていく。
「何言ってるんだ! 止めろ!」
ヌチ・ギの怒号が響く中、ドロシーは涙に濡れた顔を上げ、決意に満ちた声を振り絞った。
「戦乙女の皆さん、聞いてください。私、これから、この基地の秘密を皆さんに教えちゃいます!」
震える声が次第に力強さを帯びていく。
「ヌチ・ギさんに火口に入られてしまうと、この基地、すごくヤバいんです。ヌチ・ギさんは絶対に火口に入れるなとレヴィア様に厳命されているんです。絶対です。わかりますか? 絶対です!」
「は? 何を言っている!?」
ヌチ・ギの困惑した声が宙を舞う。一体ドロシーが何をしたいのか皆目見当がつかなかったのだ。なぜ基地の弱点を戦乙女教えるのか、ヌチ・ギの思考は混迷に沈む――――。
戦乙女たちの間に、静かな波紋が広がる。五人は無言の視線を交わし、何かが通じ合うように見えた。
震える瞬きの向こうで、想いが溢れそうになる。
あとどれくらいで帰ってくるのかは分からない。だが、一分一秒でも引き延ばす。それが今できる自分の全てだった。
ドロシーは深く息を吐き出し、覚悟を固める。
「私、がんばる……ね」
囁くような声で告げ、キュッと口を結ぶと小さな拳をブンブンと振った。
席に戻ったドロシーは、声に力を込めて告げる。
「えーとですね……。レヴィア様は今、お忙しい……という事なんですが……」
「何が忙しいだ! ならこのままぶち壊すぞ!」
絶体絶命の危機。胃を抉るような痛みに耐えながら、ドロシーは深く息を吸った。
「ヌチ・ギさんは戦乙女さん作ったり、すごい賢い方ですよね?」
ドロシーは頑張って優しげな口調でにこやかに声をかける。
「いきなり……何だ?」
「私、とーってもすごいって思うんです」
「ふん! 褒めても何も出んぞ!」
「でも、私、とても不思議なんです」
「……、何が……言いたい?」
ヌチ・ギの表情が怪訝に歪む。
「ヌチ・ギさんはこの世界を火の海にするって言ってましたね」
「それがどうした?」
「そ、それは……、すごい頭悪い人のやり方なんですよね」
ドロシーは心臓が口から出るような思いで、いまだかつて口にしたことのないような挑発に踏み切った。
「……」
ヌチ・ギはただの鑑賞用の小娘だと見下していたドロシーから挑発されたことに、頭が追い付いて行かなかった。
「だって本当に賢かったら人一人殺さず、この世界を活性化できるはずですから」
全力で作り笑いをするドロシー。
「知った風な口を利くな!」
ヌチ・ギは怒りに震えた。しかし、その奥に僅かな動揺が見える。ドロシーはそれを見逃さなかった。
「つまり……。活性化というのは口実に過ぎないんです。単に戦乙女さんたちで人殺しを楽しみたいんです」
ヌチ・ギは黙り込み、憤怒の色を深めていく。
「私、あなたに捕まって戦乙女さんたちのように操られそうになったから良く分かるんです。戦乙女さんは皆、心では泣いてますよ」
「だったら何だ! お前が止められるのか? ただの小娘が! もう一度裸にして吊るしてやる!!」
ヌチ・ギの咆哮が、火口に響き渡る。
時間稼ぎももう限界だった。ドロシーは覚悟を決めた――――。
「戦乙女さん達、辛いですよね。人殺しの道具にされて、心が引き裂かれそうですよね……。うっ……うっ……」
声が嗚咽に変わり、ドロシーの頬を熱い涙が伝う。この世界の理不尽さが、胸の奥を抉っていく。
「何言ってるんだ! 止めろ!」
ヌチ・ギの怒号が響く中、ドロシーは涙に濡れた顔を上げ、決意に満ちた声を振り絞った。
「戦乙女の皆さん、聞いてください。私、これから、この基地の秘密を皆さんに教えちゃいます!」
震える声が次第に力強さを帯びていく。
「ヌチ・ギさんに火口に入られてしまうと、この基地、すごくヤバいんです。ヌチ・ギさんは絶対に火口に入れるなとレヴィア様に厳命されているんです。絶対です。わかりますか? 絶対です!」
「は? 何を言っている!?」
ヌチ・ギの困惑した声が宙を舞う。一体ドロシーが何をしたいのか皆目見当がつかなかったのだ。なぜ基地の弱点を戦乙女教えるのか、ヌチ・ギの思考は混迷に沈む――――。
戦乙女たちの間に、静かな波紋が広がる。五人は無言の視線を交わし、何かが通じ合うように見えた。