え!?
俺が天井を見上げると、そこにも強化ガラスの大きな窓が嵌め込まれていた。そこから宇宙港の壮大な構造の全容が見て取れる。なんと、ここは巨大な観覧車状の構造物の周辺部だったのだ。
うわぁ……。
直径は優に数キロメートルはあるだろうか。宇宙港は観覧車のようにゆっくり回転し、その遠心力を使って重力を作り出しているらしい。
回転の中心部には宇宙船の船着き場があり、たくさんの船が停泊している。銀の魚群のように整然と並ぶ宇宙船の群れ。幾何学的な美しさを持つ船体が、漆黒の宇宙を背景に浮かび上がっていた。
目の前に広がる光景は、偉大な夢と技術の結晶だ。それは地球ではとても見ることのできない壮大な構造物である。俺は畏敬の念を抱かずにはいられなかった。
「グズグズしておれん。行くぞ!」
レヴィアは俺の背中をパンと叩くと、通路を小走りに駆けだした。金髪が少し弱い重力に柔らかに揺れる――――。
俺も急いで追いかけていった。
◇
しばらく行くとエレベーターにたどり着いた。ガラス製の様なシースルーで、乗り込んでよく見ると、壁面はぼうっと薄く青く蛍光している。汚れ防止か何かだろうか? 不思議な素材だ。指でそっと触れると、微かな温もりと律動を感じる。
出入口がシュルシュルと小さくなってふさがり、上に動き始めた。僅かな浮遊感が胃の辺りに伝わる。
すぐに宇宙港の全貌が見えてくる。直径数キロの巨大な輪でできている居住区と、中心にある宇宙船が多数停泊する船着き場、そして、眼下に広がる巨大な碧い惑星に、満天の星を貫く天の川。これが神の世界……。なんてすごい所へ来てしまったのだろうか。
居住区は表面をオーロラのように赤い明かりがまとわりついていていて、濃くなったり薄くなったりしながら、宇宙の闇に浮かぶ巨大な光環を形作っている。そして、同時にオーロラの周囲にはキラキラと閃光が瞬いていて、煌びやかな光の帳が巨大な輪を包み込んでいる。
「綺麗ですね……」
俺がそうつぶやくと、レヴィアは眉をひそめた。
「なに言っとる。あれは危険なんじゃぞ」
「危険……?」
俺は何を言っているのか分からなかった。あんな美しいイルミネーションのような輝きの何が危険なのだろうか?
「あれは宇宙線……つまり放射線じゃ」
レヴィアは顔をしかめる。
「えっ!? じゃ、あの煌めきは全部放射線ですか? 身体に当たるとヤバい?」
「そうじゃ、宇宙には強烈な放射線が吹き荒れとるでのう……。止めて欲しいんじゃが……」
「止められないですよね、さすがに」
「ははっ。ワシらじゃ無理じゃ。じゃが、ヴィーナ様なら止められるぞ」
レヴィアは諦観したように苦笑する。
「へ……?」
俺は驚いた。この神の世界に展開する大宇宙の摂理すら、女神様なら変えられる、という。
科学の世界の中にいきなり顔を出すファンタジー。サークルで一緒に踊っていた女子大生なら神の世界の放射線を止められると言うドラゴン。一体どうやって? 俺はその荒唐無稽さに言葉を失った。現代物理学を根底から覆すような力を、あの可愛い笑顔の先輩が持っているなんてとても想像がつかない。
「ヴィーナ様は別格なのじゃ……」
レヴィアはそう言ってひときわ明るい星、太陽を見つめた。その眼差しには、数千年を生きてもたどり着けない境地への深い敬意が宿っていた。
俺が天井を見上げると、そこにも強化ガラスの大きな窓が嵌め込まれていた。そこから宇宙港の壮大な構造の全容が見て取れる。なんと、ここは巨大な観覧車状の構造物の周辺部だったのだ。
うわぁ……。
直径は優に数キロメートルはあるだろうか。宇宙港は観覧車のようにゆっくり回転し、その遠心力を使って重力を作り出しているらしい。
回転の中心部には宇宙船の船着き場があり、たくさんの船が停泊している。銀の魚群のように整然と並ぶ宇宙船の群れ。幾何学的な美しさを持つ船体が、漆黒の宇宙を背景に浮かび上がっていた。
目の前に広がる光景は、偉大な夢と技術の結晶だ。それは地球ではとても見ることのできない壮大な構造物である。俺は畏敬の念を抱かずにはいられなかった。
「グズグズしておれん。行くぞ!」
レヴィアは俺の背中をパンと叩くと、通路を小走りに駆けだした。金髪が少し弱い重力に柔らかに揺れる――――。
俺も急いで追いかけていった。
◇
しばらく行くとエレベーターにたどり着いた。ガラス製の様なシースルーで、乗り込んでよく見ると、壁面はぼうっと薄く青く蛍光している。汚れ防止か何かだろうか? 不思議な素材だ。指でそっと触れると、微かな温もりと律動を感じる。
出入口がシュルシュルと小さくなってふさがり、上に動き始めた。僅かな浮遊感が胃の辺りに伝わる。
すぐに宇宙港の全貌が見えてくる。直径数キロの巨大な輪でできている居住区と、中心にある宇宙船が多数停泊する船着き場、そして、眼下に広がる巨大な碧い惑星に、満天の星を貫く天の川。これが神の世界……。なんてすごい所へ来てしまったのだろうか。
居住区は表面をオーロラのように赤い明かりがまとわりついていていて、濃くなったり薄くなったりしながら、宇宙の闇に浮かぶ巨大な光環を形作っている。そして、同時にオーロラの周囲にはキラキラと閃光が瞬いていて、煌びやかな光の帳が巨大な輪を包み込んでいる。
「綺麗ですね……」
俺がそうつぶやくと、レヴィアは眉をひそめた。
「なに言っとる。あれは危険なんじゃぞ」
「危険……?」
俺は何を言っているのか分からなかった。あんな美しいイルミネーションのような輝きの何が危険なのだろうか?
「あれは宇宙線……つまり放射線じゃ」
レヴィアは顔をしかめる。
「えっ!? じゃ、あの煌めきは全部放射線ですか? 身体に当たるとヤバい?」
「そうじゃ、宇宙には強烈な放射線が吹き荒れとるでのう……。止めて欲しいんじゃが……」
「止められないですよね、さすがに」
「ははっ。ワシらじゃ無理じゃ。じゃが、ヴィーナ様なら止められるぞ」
レヴィアは諦観したように苦笑する。
「へ……?」
俺は驚いた。この神の世界に展開する大宇宙の摂理すら、女神様なら変えられる、という。
科学の世界の中にいきなり顔を出すファンタジー。サークルで一緒に踊っていた女子大生なら神の世界の放射線を止められると言うドラゴン。一体どうやって? 俺はその荒唐無稽さに言葉を失った。現代物理学を根底から覆すような力を、あの可愛い笑顔の先輩が持っているなんてとても想像がつかない。
「ヴィーナ様は別格なのじゃ……」
レヴィアはそう言ってひときわ明るい星、太陽を見つめた。その眼差しには、数千年を生きてもたどり着けない境地への深い敬意が宿っていた。