「レ、レヴィア様ぁ……」

 俺はポロポロと涙をこぼしながらガックリと肩を落とす。

「なんじゃ?」

 その時、突如としてどこかから声が聞こえた。

「……? 空耳……?」

 俺は慌てて辺りを見回す――――。

「何やっとる! 作戦会議をするぞ!」

 なんと、足元からレヴィアの声がするではないか! 心臓が(おど)り、息が止まる。

「えっ!?」

 見おろせば、レヴィアが俺の掘ったトンネルの中にいる!?

 その姿は、先ほどまでの巨大な龍とは打って変わって、あの愛らしいおかっぱ頭の少女の姿だった。金色の髪が、暗闇の中でかすかに輝いている。

「あ、あれ? あのドラゴンは?」

 俺が間抜けな声を出して聞くと、レヴィアはフンッと鼻で嗤った。

「あれはただの(デコイ)じゃ。攻撃の時以外は囮を見せておくのは常套手段……。奴も囮だったようじゃな」

「えっ! じゃあ彼女もノーダメージってこと?」

 俺は神々の戦いの裏に広がる高度な騙し合いに、思わずため息をついた。

戦乙女(ヴァルキュリ)はヤバい、ちょいと工夫せんと倒せん。お主も手伝え!」

 レヴィアは鋭い視線でパンと俺の肩を叩く。

「え!? 手伝えって言っても……」

 俺は戸惑いを隠せない。自分が戦闘で役に立つイメージなんて全く持てなかったのだ。

「俺はもう一般人ですよ? チート能力なんてないんです……」

「つべこべ言うな! 死ぬかやるかじゃ! どっちじゃ!?」

 レヴィアの真紅の瞳がギラっと光を放つ。

「や、やりますよぉ……。でも……」

 やらなきゃ死ぬと言われたらやる以外ないのだが……、あんな神々の戦いでは足手まといにしかなれないだろう。

「ステータスならカンストさせてやる!」

 レヴィアがそう言うと同時に、突如として頭の中でピロロン! ピロロン! とレベルアップの音が延々と鳴り響き始めた。その懐かしい音は、まるで祝福の鐘のように心地よく響きわたる。

 刹那、全身に力が(みなぎ)っていく――――。

「うっ、うっほぉぉぉ!!」

 驚いてステータスを確認すると、

ユータ 時空を超えし者
商人 レベル:65535

 と、信じられないほどのレベルに到達していた。目を疑うような数字が、俺の新たな現実となる。

「え!? 六万!?」

 驚愕の声を上げる俺に、レヴィアは首を振り、冷静に説明を始めた。

「レベルなんぞ戦乙女(ヴァルキュリ)相手にはあまり意味がない。あ奴は【物理攻撃無効】の属性がついとるからお主の攻撃は一切効かん。でも、攻撃受けたらお主は死ぬし、あ奴はワープしてくる」

 その重い冷徹な口調に、俺は息を呑んだ。