「お主、何をするんじゃ!」

 この声は……! 俺は耳を疑う。心臓が高鳴り、希望の灯火が胸の内で揺らめく。

 恐る恐る目を開けると、なんとレヴィアが俺に抱き着いて、二人を覆うシールドでヌチ・ギの攻撃を防いでいたのだ。

 目の前でサラサラと金髪が陽の光を浴びて煌めき、ふんわりとさわやかな柑橘系の香りが漂ってくる――――。

「レ、レヴィア様!」

 俺は感極まって思わず叫ぶ。声が震え、涙が頬を伝う。

 レヴィアは静かにうなずいた。その真紅の瞳には、深い慈愛と強い決意が宿っている。

「無茶をするのう、お主」

 世話が焼けるとばかりにニヤッと笑うレヴィア。

 俺はその笑顔に深い安堵を覚えた。

「ドラゴン……、何の真似だ?」

 ヌチ・ギの声が冷たく響く。その瞳には怒りと、そして僅かな恐れの色が浮かんでいる。この世界で唯一自分に比肩する存在、レヴィアの出現が、動揺をもたらしたことは明らかだった。

「この男とあの娘は我の友人じゃ」

 レヴィアは一歩踏み出し、毅然とした態度でヌチ・ギと向き合う。その姿は、まるで古の英雄のように凛々しい。

「相互不可侵を犯してるのはお主の方じゃぞ!」

 金髪おかっぱの少女の姿をしたレヴィアの声には、(りゅう)の威厳が滲み出ている。周囲の空気が、その威圧感に震えているようだ。

 俺は息を呑む。レヴィアの背中に、希望の光を見た気がした。

「そいつはチート野郎だ」

 ヌチ・ギは歯を()みしめ、憎悪の眼差しで俺を指さす。

「チートは犯罪であり、処罰する権限は俺にある!」

 早口でまくし立てるヌチ・ギ。しかし、レヴィアは冷ややかな微笑みを浮かべる。

「レベルを落としたじゃろ?」

 その口調には、かすかな(あざけ)りが滲む。

「ペナルティはもう終わっておる。娘を(さら)うのはやり過ぎじゃ!」

 レヴィアの瞳に、(りゅう)の怒りが燃え盛る。その威圧感に、周囲の空気さえも震えているようだ。

 ヌチ・ギは言葉を失い, ただレヴィアを睨みつける。その表情には、焦燥(しょうそう)憤怒(ふんぬ)が交錯している。だが次の瞬間、彼の目が何かを決意したかのように冷たく光る。

「まぁ、いい……。いずれお前とは決着をつけるつもりだった。少し早まってしまったが……」

 突如、ヌチ・ギは後方へ跳躍する。その動きは、人知を超えた俊敏(しゅんびん)さだ。

戦乙女(ヴァルキュリ)! 起動!」

 その叫びと共に、彼は空間を大きく切り裂く。裂け目から溢れ出す光は、まるで稲妻が空中にとどまったような激しいエネルギーを感じさせた。