店内に、再びドアベルと父の声が響く。
そこには見慣れた少年が立っていた。
相も変わらず呑気な笑顔だ。
「よっ、柑那」
「やーっときた。よっ、じゃない、遅い!30分遅刻、謝罪でもしやがれ!」
流石に30分は誤差にはさせない。
「ごめんて」
一応謝るのが彼のいいところでもあるが、改善してほしい。
しかしそれ以上責めることはせず、柑那は少女に向き直る。
「こいつだよ、さっき言ってたの。西園寺グループのぼんぼん。英生って言うの。」
正直、柑那は英生を誰かに紹介するのは嫌いだった。
名字や家柄に反応し、彼という人間に興味を持たなくなるのだ。
実はとても抜けていて、お茶目で、少し女々しいのだが誠実を象ったような性分の彼自身ではなく、影響力の強い実家の印象ばかりがどうしても目立ってしまうのが気に入らなかった。
「わぁ、西園寺グループ?」
案の定相手は目を輝かす。
見慣れたものだ。
「聞いたことないけどなんか凄い!!どんな会社なの?」
前言撤回、見たことのない反応だ。
この少女は柑那の予想の斜め上を行くので拍子抜けする。
今日はあからさまなゴマすりやら詮索やらを聞かなくていいのだ。
「結構大手の会社だよ、俺のじいちゃんが会長やってんだ」
呑気なものだ。いつ利用されて被害を受けるか分かったものではないのに。
西園寺グループ。
元財閥でも財閥傘下でもないが、財閥解体前からの老舗超大手企業。
経営者は皆優秀で成長は留まることを知らず、今や海外にもその名を轟かせる。
日本の、世界各国の経済を多方面で支え、それぞれに持つ子会社、孫会社さえ大手と呼べる規模だ。
日本国内で知らぬものは幾ら探してもいない程だ。
しかしそれは英生に関係ない。
「この子は・・・」
少し改まって英生に向き直った柑那は少し焦った。
早速英生に新しい友達を紹介しようと思ったものの、名前がわからないのだ。
しかし止まって居るのも悪いし、正直に聞くしかあるまい。
「えっと・・・名前、教えて貰ったっけ?」
失態だ。ほぼ初対面で話しかけておいて自己紹介をしないとは。
「あ、自己紹介してないね。私、桜木優花。よろしくね!」
そんな気はしていたが、この少女はどうにも見た目に反して大分軽い。
人は見た目で判断してはいけないものだと言う言葉が身に沁みる。
桜木優花。この少女に相応しい綺麗な名前だ。
「うちは、月宮柑那。こちらこそよろしく!」
「お前ら名前知らずに喋ってたの?コミュ力おばけじゃん。」
英生に言われるのは何とも心外である。
しかしおばけは失礼ではないだろうか。
「ちょっと、お客さんに失礼!折角の金ズルなくしちゃうじゃん。」
何やら良からぬことを口走ってはいないだろうか。
「お前の方が失礼じゃね?それ。」
気の所為ではなかったようだ。
途端に申し訳なくなった柑那は恐る恐る優花を見遣るが、当の本人は西園寺グループとは何だったかと悶々としている。
そこには見慣れた少年が立っていた。
相も変わらず呑気な笑顔だ。
「よっ、柑那」
「やーっときた。よっ、じゃない、遅い!30分遅刻、謝罪でもしやがれ!」
流石に30分は誤差にはさせない。
「ごめんて」
一応謝るのが彼のいいところでもあるが、改善してほしい。
しかしそれ以上責めることはせず、柑那は少女に向き直る。
「こいつだよ、さっき言ってたの。西園寺グループのぼんぼん。英生って言うの。」
正直、柑那は英生を誰かに紹介するのは嫌いだった。
名字や家柄に反応し、彼という人間に興味を持たなくなるのだ。
実はとても抜けていて、お茶目で、少し女々しいのだが誠実を象ったような性分の彼自身ではなく、影響力の強い実家の印象ばかりがどうしても目立ってしまうのが気に入らなかった。
「わぁ、西園寺グループ?」
案の定相手は目を輝かす。
見慣れたものだ。
「聞いたことないけどなんか凄い!!どんな会社なの?」
前言撤回、見たことのない反応だ。
この少女は柑那の予想の斜め上を行くので拍子抜けする。
今日はあからさまなゴマすりやら詮索やらを聞かなくていいのだ。
「結構大手の会社だよ、俺のじいちゃんが会長やってんだ」
呑気なものだ。いつ利用されて被害を受けるか分かったものではないのに。
西園寺グループ。
元財閥でも財閥傘下でもないが、財閥解体前からの老舗超大手企業。
経営者は皆優秀で成長は留まることを知らず、今や海外にもその名を轟かせる。
日本の、世界各国の経済を多方面で支え、それぞれに持つ子会社、孫会社さえ大手と呼べる規模だ。
日本国内で知らぬものは幾ら探してもいない程だ。
しかしそれは英生に関係ない。
「この子は・・・」
少し改まって英生に向き直った柑那は少し焦った。
早速英生に新しい友達を紹介しようと思ったものの、名前がわからないのだ。
しかし止まって居るのも悪いし、正直に聞くしかあるまい。
「えっと・・・名前、教えて貰ったっけ?」
失態だ。ほぼ初対面で話しかけておいて自己紹介をしないとは。
「あ、自己紹介してないね。私、桜木優花。よろしくね!」
そんな気はしていたが、この少女はどうにも見た目に反して大分軽い。
人は見た目で判断してはいけないものだと言う言葉が身に沁みる。
桜木優花。この少女に相応しい綺麗な名前だ。
「うちは、月宮柑那。こちらこそよろしく!」
「お前ら名前知らずに喋ってたの?コミュ力おばけじゃん。」
英生に言われるのは何とも心外である。
しかしおばけは失礼ではないだろうか。
「ちょっと、お客さんに失礼!折角の金ズルなくしちゃうじゃん。」
何やら良からぬことを口走ってはいないだろうか。
「お前の方が失礼じゃね?それ。」
気の所為ではなかったようだ。
途端に申し訳なくなった柑那は恐る恐る優花を見遣るが、当の本人は西園寺グループとは何だったかと悶々としている。
