写真記念

英生と解散し、優花の家によってから帰って、店に入る。
ここで優花の姿を見るのは2年ぶりだ。
「お邪魔します。」
「いらっしゃいませ」
いつかと同じ様に、優花は店の中を見渡す。
ふと、泳ぐ視線がある一点で止まる。
「カメラ、売れたんですね。」
「ああ、うん。」
「ありがとうございます」
優花は安堵とも寂寥とも取れる表情をしていた。
静かな、少し暗さを含んだ空気が流れる。
その空気を破るように、ドアベルの音が響く。
「おまたせ」
「いらっしゃいませ」
黒い高級車が走り去るのが見えた。
西園寺家の自家用車だろう。
「あんたにしては早かったじゃん。」
後の心配を掻き消すように英生を軽く茶化す。
いつものように椅子を示し、メニューを手渡し、お冷を注ぐ。
接客は既に癖になっているようで、全くの無意識だった。
「あ、ありがとうございます」
英生の鞄の中身が目に映る。
「優花、これ。」
優花は狼狽え、徐ろに立ち上がる。
「なんで、これ、なんで英生くんが持ってるんですか?」
「これ、返す」
その言葉に反応したように、優花は表情を変える。
「いりません。売るように紗月ちゃんに頼んだのは私です。」
優花の毅然とした態度に柑那は目を見開く。
時が止まったような静寂の中、深呼吸をし、返す言葉を考える。
口を開いたのは柑那だった。
「じゃあ貸してもらったら?なんだかんだ忙しくて、中の写真まだ消してないんだ。」
微かな表情の変化から、優花の迷いが読み取れる。
「・・・お借りします。お父さんの、貸して下さい。」
そう言って写真のフォルダを見る。
なにかがいい方向に向かないだろうか。
しかし優花の反応は全く予想外だった。
「え・・・何、これ?」
紗月にも思い当たることはない。
カメラは定期的な手入れしかしていないのだ。
「どうしたの?」
優花は困惑しきっていた。
「この写真、知りません。時期からして私も見ていないとおかしいんですが、見たことがないんです。」
「え、見てもいい?」
「俺も」
優花は二人にカメラを差し出す。
「・・・時計?」
カメラに収められた最後の写真だ。細工の施された懐中時計だった。
「凄い・・・綺麗」
ふと、ある考えが頭を過る。
「ねぇ、これ直接見てみたくない?」
こんなに綺麗なものを見たことがなかった。
どれだけ撮影者の技術が高くとも元のものが綺麗でなければここまでの写真は撮れないだろう。
そして親友の父の最後の写真だ。
ならば探しに行ける距離にあるだろう。
いかない手はないのだ。
一方英生はわけがわからないという顔つきだ。
「そりゃまあ見てみたいけど…」