「まだあんなにちいさいに、気の毒になぁ」
「お父ちゃん、交通事故でだってよ」
「何でもトラックにはねられて、運転手もすぐだったとか」
「お子さん、4人も居るんだろう?母親は大丈夫なのかい?」
暗い空気の中、繰り広げられる会話は、優花の家のことだ。
常連客は死んだ。
店主は報せを聞いてから荒れている。
母は柑那と一緒に参列したものの、会話に交ざるわけでもなく、ただじっと追悼し、優花の母の肩を抱いていた。
英生は参列しなかった。
付き合いも無いに等しく、英生が参列したら式の邪魔になりかねないと自覚していたからだ。
電話越しにずっと、常連客の不幸を悼んでいた。
優花は大きな目を泣き腫らしていた。
優花の兄弟は居辛かったのか、皆会場の外へ出て行ってしまった。
優秀な常連客の死を悼むはずなのに、桜木家の人間は葬式を井戸端会議のネタにしていることに無性に腹が立った。
そういう柑那も、常連客の死より友人の心配をしていた。