「はー、アイスも早く溶けちゃうね」
 夏休み。夏期講習を一緒に受けていた私は、購買で買ったアイスを食べながら、東野くんの隣でつぶやいた。公立高校なので、冷房のある部屋とない部屋とある。どういうわけか夏期講習『数学I』は冷房のない部屋で開かれていた。窓を開けて、ムッとする空気の中。私と同じかそれ以上に汗をかいてる東野くんに告げる。
「東野くんといるとあついね」
「え、なんかごめん」
 ちょっと申し訳なさそうにする彼を見て、何だかおかしくなる。
「一口いる?」
 アイスをそっと彼に向け、そんなことを訊いてみる。しかし彼はそっぽ向く。
「いい」
 やった。照れてる。