ありがとうの文字が滲んでいる。よく見ると他にも文字が滲んでいる箇所があった。その箇所に手を置き、鼻を啜った。身体中に凪への想いが溢れ出す。

 凪の辛さを半分引き受けることができたらいいのに……。それができない自分がもどかしい。

 でも、ちょっと待てよ。

 なにかが頭の中で引っかかって、凪からの手紙をもう一度最初から読み直した。

『大学は体調が落ち着くまで休学することになると思います。』の部分に目が止まる。

 休学したら一年遅れになるかもしれないってこと? ということは、俺が現役で大学に入れたら、そのとき凪はまだ……。

 決めた。

 俺は手紙をそっとしまうと机に向かった。もう時間を無駄にすることはできない。ひとまず数学の問題集に手を伸ばそうとしたら部屋がノックされた。