「遅くまでお疲れ。どうだった、塾は?」

 助手席に乗り込むと、運転席の父さんが尋ねてきた。

「普通。それより迎えにきてくれてありがとう」

「ちょうど仕事帰りと重なったしな。そうか普通か。大変だな、受験生は」

父さんは左右を確認すると右のウィンカーを出した。

「……うん」

「まぁ、母さんからの圧は適当に受け流して、お前が後悔しないように頑張れ」

 隣から手が伸びてきて、俺の頭をぽんぽんと叩いていく。

「え? 父さんってそういう感じ?」

「どういう意味だ?」

「いや、父さんも母さんみたいに学歴第一主義者なのかと」

「そんなつもりはなかったけどな。なんでそう思ったんだ?」

「だって、父さん自身賢いから」

「まぁ、勉強で困ったことはあんまりなかったな。でも、勉強だけができればいいわけじゃない。父さんとしては、お前がひとりで飯を食えるようになってくれればなんでもいい」

「マジで?」

「あぁ」