四条 夜。
愛嬌があって可愛らしく、両親から愛を注がれ幸せな日々を過ごす少女。
それを何度夢見たことか。現実とはとても虚しく、夜は愛されることもなくいつも家の離れで過ごしていた。
これでも侍女のように過ごさなくていいだけましだ。と自分に言い聞かせるようにして早十年。
夜は物心ついた時からこの離れに住んでいた。理由は簡単。
愛が生まれてしまったからだ。夜よりも異能を使う力が多いそうで、愛の待遇と言ったら夜とは比べ物にならないほどだった。
それでも幼いながら両親を夜は幾度も幾度も待ち続けた。
何年か経った頃。夜はもう待つこと自体をやめるようになってきた。諦めがついてきた。
両親は私を愛してはくれない。私はこの離れで一日一日を過ごしていくだけなのだ、と。
昼と夜の食事ではさすがに家族のもとへ行き、何も行わず、何も言わず離れに戻ってくる。
「あらあらお姉さま。みすぼらしい格好してこの家にいるなんて本当四条家にふさわしくないですわ」
「本当ねぇ」
クスクスと嘲笑う妹と母親。それを何も言わず黙ってみる父親。
特段暴力などは振るわれていない。しかし、愛の対義語が無関心とはよく言ったもので、
幼い時の夜にはとても辛かった。
「お姉さまお料理冷めてしまいますわよ?」
そういいながらフォークで肉を刺し、食べる愛。
この光景にも見慣れたものだ。
「そうだお父様!今度パーティーがありますの。そのためのお洋服が欲しいですわ!!」
いつものようによくねだる妹だ。
この子の旦那は金持ちじゃなければ出費がひどいだろうな、と呑気なことを考える。
妹は自分を貴族のように、いやまあ外国だと貴族になるのか。
まあそんなことは置いといて。自分は根っからの貴族だと思っているから何をしていても許されるとでも思っているのだろう。
四宮家ならそうかもしれないけれどその傍系の四条家は憲法にのっとるしかない。
まあ四宮ならもみ消せるだろうけれど四宮の人が愛を選んだとなると
私は見る目ないなーと思うだろう。まあでも四宮ならどうとでもなるか。
「お姉さま!聞いているんですの!?」
おいおい。今何年だと思ってるんだ。そんなお嬢様口調な家なんてあるのか。
いや、意外とあるのか?
「お姉さま!?」
「あ…ごめんなさい愛。ぼうっとしていましたわ。」
実際は心の中で以上様口調に突っ込みいれてただけだけどな。
「お姉さまはそんなみすぼらしい格好をしてパーティーに行くんですの?」
クスクスと笑う愛と母上。