というわけで。
破局の危機を乗り越え、お互いに下の名前で呼び合うようになった僕と彩菜は早速、次の休みにデートに行くことにした――んだけど。
「それで、今度の土曜日どこに行こうか? 彩菜はどこか行きたい所ある?」
「んー、直人くん……そうだねー」
学校からの帰り道、僕と彩菜は次のデートでどこに行くべきか、2人で頭を悩ませていた。
とりあえず仲直りの印にデートに行こうって話になったんだけど。
いかんせん僕はデート経験が彩菜と数回しただけしかなくて。
しかもそれも、偶然出会ってショッピングモール巡りをすることになったり。
話の流れで明日カラオケに行こうってなったり。
彩菜のおばあちゃんちに行くついでに、ご近所さんな僕の家でおうちデートをしたり。
つまり、いざデートに行こうとプランを立てて実際に実行した経験が、僕には一度もなかったのだ。
そして。
そうであることを僕は正直に彩菜に伝えて、こうやってデートプランを一緒に考えることになったのだった。
でも今は無理でも。
そう遠くない将来、僕一人だけの力で彩菜に素敵なデートをエスコートできるようになってみせる。
「デートっていうと、やっぱり遊園地……とか?」
僕は貧弱な想像力でベタな提案をした。
「ごめん直人くん。わたし今月はちょっとピンチで遊園地は厳しいかなって……」
「あ、ううん、気にしないで。遊園地は結構お金かかるもんね。よっぽど好きっていうなら別だけど、そうじゃないなら無理していく必要はないかなって」
友人関係が極めて希薄な上に、お金を使う趣味も特に持たない僕は、お小遣いやらお年玉を結構ため込んでいる。
でもそんな僕と違って、彩菜は友達と遊びに行ったりおしゃれをしたりするから、結構シビアなお小遣いのやりくりをしているみたいなのだ。
そうでなくとも入園料だけでもかなり高額な遊園地は、高校生が行くには正直ちょっと割高なデートスポットだろう。
まぁその分アトラクションの種類も多いし、行けば絶対に楽しいことに変わりはないんだろうけど。
「じゃああのね、もしよかったらなんだけど」
「なになに、彩菜はどこか行きたい所とかあるの?」
「駅前モールからちょっと行ったところに猫カフェができたの。前から一度行ってみたいなーって思ってたんだけど」
「いいんじゃない? 僕もちょっと行ってみたいかも。あ、でもいいのかな?」
「いいって、なにが?」
彩菜がこてんと可愛らしく小首をかしげた。
「だってほら、よその猫と会ってたら、ちび太に浮気って思われちゃうかもでしょ?」
「ふーんだ、先に浮気したのはちび太の方なんだから。わたしというものがありながら、直人くんとばっかり仲良くして。わたしはまだあの日のひどい裏切りを忘れてないんだから」
「あははは……」
可愛らしくむくれてみせる彩菜に、僕は苦笑いを返した。
どうやら彩菜は、あの時の『ちび太猫パンチ事件!』をまだ根に持っているみたいだ。
猫マイスターを自称する彩菜としては、飼い猫にパンチされたのが相当悔しかったんだろう。
「それじゃあ来週はその新しくできた猫カフェに行ってみるってことで。その後は適当にモールとか歩こうよ?」
「やった! じゃあ約束ね」
そう言って彩菜が右手の小指を出してきたので、僕もその手に右手の小指を絡めた。
その柔らかい女の子の手の感触に僕はドキッと胸を高鳴らせる。
「「ゆぎきりげんまん嘘ついたら針千本飲~ます。指切った♪」」
そしてお決まりのフレーズと共に指を離した。
ってなわけで。
今週末は彩菜と一緒に猫カフェにデートに行くことになった。
破局の危機を乗り越え、お互いに下の名前で呼び合うようになった僕と彩菜は早速、次の休みにデートに行くことにした――んだけど。
「それで、今度の土曜日どこに行こうか? 彩菜はどこか行きたい所ある?」
「んー、直人くん……そうだねー」
学校からの帰り道、僕と彩菜は次のデートでどこに行くべきか、2人で頭を悩ませていた。
とりあえず仲直りの印にデートに行こうって話になったんだけど。
いかんせん僕はデート経験が彩菜と数回しただけしかなくて。
しかもそれも、偶然出会ってショッピングモール巡りをすることになったり。
話の流れで明日カラオケに行こうってなったり。
彩菜のおばあちゃんちに行くついでに、ご近所さんな僕の家でおうちデートをしたり。
つまり、いざデートに行こうとプランを立てて実際に実行した経験が、僕には一度もなかったのだ。
そして。
そうであることを僕は正直に彩菜に伝えて、こうやってデートプランを一緒に考えることになったのだった。
でも今は無理でも。
そう遠くない将来、僕一人だけの力で彩菜に素敵なデートをエスコートできるようになってみせる。
「デートっていうと、やっぱり遊園地……とか?」
僕は貧弱な想像力でベタな提案をした。
「ごめん直人くん。わたし今月はちょっとピンチで遊園地は厳しいかなって……」
「あ、ううん、気にしないで。遊園地は結構お金かかるもんね。よっぽど好きっていうなら別だけど、そうじゃないなら無理していく必要はないかなって」
友人関係が極めて希薄な上に、お金を使う趣味も特に持たない僕は、お小遣いやらお年玉を結構ため込んでいる。
でもそんな僕と違って、彩菜は友達と遊びに行ったりおしゃれをしたりするから、結構シビアなお小遣いのやりくりをしているみたいなのだ。
そうでなくとも入園料だけでもかなり高額な遊園地は、高校生が行くには正直ちょっと割高なデートスポットだろう。
まぁその分アトラクションの種類も多いし、行けば絶対に楽しいことに変わりはないんだろうけど。
「じゃああのね、もしよかったらなんだけど」
「なになに、彩菜はどこか行きたい所とかあるの?」
「駅前モールからちょっと行ったところに猫カフェができたの。前から一度行ってみたいなーって思ってたんだけど」
「いいんじゃない? 僕もちょっと行ってみたいかも。あ、でもいいのかな?」
「いいって、なにが?」
彩菜がこてんと可愛らしく小首をかしげた。
「だってほら、よその猫と会ってたら、ちび太に浮気って思われちゃうかもでしょ?」
「ふーんだ、先に浮気したのはちび太の方なんだから。わたしというものがありながら、直人くんとばっかり仲良くして。わたしはまだあの日のひどい裏切りを忘れてないんだから」
「あははは……」
可愛らしくむくれてみせる彩菜に、僕は苦笑いを返した。
どうやら彩菜は、あの時の『ちび太猫パンチ事件!』をまだ根に持っているみたいだ。
猫マイスターを自称する彩菜としては、飼い猫にパンチされたのが相当悔しかったんだろう。
「それじゃあ来週はその新しくできた猫カフェに行ってみるってことで。その後は適当にモールとか歩こうよ?」
「やった! じゃあ約束ね」
そう言って彩菜が右手の小指を出してきたので、僕もその手に右手の小指を絡めた。
その柔らかい女の子の手の感触に僕はドキッと胸を高鳴らせる。
「「ゆぎきりげんまん嘘ついたら針千本飲~ます。指切った♪」」
そしてお決まりのフレーズと共に指を離した。
ってなわけで。
今週末は彩菜と一緒に猫カフェにデートに行くことになった。