「まさかのスタンディング・スタイル!?」
「これは立って歌わないといけない歌なんだって」
「そ、そうなんだ……!?」
「じゃあ行くね!」
そうして西沢さんが気合を込めた表情で歌い始めたのは――――僕が全く知らない曲だった。
心の小宇宙を抱きしめると燃え上がって奇跡が起こってどうのって感じの歌詞で。
まるでペガサスが飛んでいるかのように幻想的で、それでいて血潮が熱く燃えたぎってくるような心が震える名曲だった。
あと本気モードの西沢さんがめちゃくちゃ上手でした。
「ねぇねぇ、どうだった? 実はおばあちゃんに指導してもらったんだよね。採点でも95点以上を安定して出せるようになってるんだけど」
自分でも上手く歌えてる自信があるんだろう。
歌い終わると同時にドヤ顔で聞いてくる西沢さんが可愛すぎて困ってしまう。
いやまぁ困りはしないんだけど──いや、やっぱり困ってしまうかな。
主に僕の胸がドキドキしてしまうという点において。
「すごく上手だったよ。プロかと思ったくらい」
「やったぁ♪」
「でもごめん。聞いたことがなかったんだよね……これって何のアニメの歌?」
「え? あー、えっと、歌詞にもあったはずだけど、聖闘〇星矢ってアニメのオープニング……だった、かな? おばあちゃんがお勧めしてくれたんだけど、わたしはあんまりアニメに詳しくなくて」
「あ、それなんかタイトルの名前だけは聞いたことがあるような。10年前くらいにリメイクされた……んだっけ?」
なんとなくそんな話が記憶にあるような、ないような……。
でも元々は僕が生まれるだいぶ前のアニメだよね?
「ええっ、そんなぁ、佐々木くん知らなかったのかぁ……」
「うん、ごめんね……」
アニメ好きと言いながら、西沢さんのせっかくの好意を無下にしてしまった僕は、あまりの申し訳なさに肩を縮こまらせてしまう。
「えっと、それは全然いいの。世の中にはすごい数の歌があるんだから、そりゃあ知らない歌の方が圧倒的に多いわけだし」
「でも有名な曲だったんでしょ?」
「っておばあちゃんは言ってた。あ、わたしのおばあちゃんはカラオケが得意で、『昼カラの佐藤』って呼ばれてるんだけど」
「うん、よく行ってるみたいだね」
っていうか何その二つ名!?
「何かいいアニメの曲がないかなって相談したら、これは絶対に男の子にウケる定番のアニメの歌だって言われたの」
「ああうん、すごく盛り上がりそうな曲ではあったよね。思わず足でリズムをとりたくなっちゃったし」
「でしょ!?」
「でもその話を聞いてやっぱり思ったんだけど。多分ちょっとだけおばあちゃんの情報が古いんじゃないかなって思うんだ」
西沢さんのおばあちゃんが、毎年100本以上放映される現行の最新アニメに精通しているとはさすがに思えないから。
それもう『昼カラの佐藤』じゃなくて『アニオタの佐藤』になっちゃうよね。
「もう、おばあちゃんってば……いっぱい練習したのになぁ……」
せっかく練習してきたアニソンを僕が知らなかったせいで、西沢さんががっくりと肩を落としてしまう。
「あ、でもでもすごくいい曲だったから、次に来るまでに僕も歌えるようにしてくるね。今度は一緒に歌おうよ。絶対盛り上がると思うんだ」
「あ、うん……!」
僕の言葉で再び笑顔になる西沢さん。
ころころと表情が変わるのも可愛いんだけど、やっぱり僕は笑顔の西沢さんが一番好きだな。
その後も僕と西沢さんはカラオケを楽しんだ。
今度はちょっと勇気を出してアニメアニメした曲も歌ってみたら、
「うんうん、これこれ! こういうのを期待してたの! ねぇねぇ、なんていうアニメの歌なの? 今度見て見るから教えて♪」
西沢さんがやけに喜んでくれて、僕はスマホでアニメのタイトルを見せながらつられて笑ってしまったのだった。
誰かと行く――西沢さんと行くカラオケって楽しいなぁ。
好きな歌手とか歌を聞いたり、歌って欲しい歌をお互いにリクエストとかもしながら。
僕はしみじみとそう思っていた。
「これは立って歌わないといけない歌なんだって」
「そ、そうなんだ……!?」
「じゃあ行くね!」
そうして西沢さんが気合を込めた表情で歌い始めたのは――――僕が全く知らない曲だった。
心の小宇宙を抱きしめると燃え上がって奇跡が起こってどうのって感じの歌詞で。
まるでペガサスが飛んでいるかのように幻想的で、それでいて血潮が熱く燃えたぎってくるような心が震える名曲だった。
あと本気モードの西沢さんがめちゃくちゃ上手でした。
「ねぇねぇ、どうだった? 実はおばあちゃんに指導してもらったんだよね。採点でも95点以上を安定して出せるようになってるんだけど」
自分でも上手く歌えてる自信があるんだろう。
歌い終わると同時にドヤ顔で聞いてくる西沢さんが可愛すぎて困ってしまう。
いやまぁ困りはしないんだけど──いや、やっぱり困ってしまうかな。
主に僕の胸がドキドキしてしまうという点において。
「すごく上手だったよ。プロかと思ったくらい」
「やったぁ♪」
「でもごめん。聞いたことがなかったんだよね……これって何のアニメの歌?」
「え? あー、えっと、歌詞にもあったはずだけど、聖闘〇星矢ってアニメのオープニング……だった、かな? おばあちゃんがお勧めしてくれたんだけど、わたしはあんまりアニメに詳しくなくて」
「あ、それなんかタイトルの名前だけは聞いたことがあるような。10年前くらいにリメイクされた……んだっけ?」
なんとなくそんな話が記憶にあるような、ないような……。
でも元々は僕が生まれるだいぶ前のアニメだよね?
「ええっ、そんなぁ、佐々木くん知らなかったのかぁ……」
「うん、ごめんね……」
アニメ好きと言いながら、西沢さんのせっかくの好意を無下にしてしまった僕は、あまりの申し訳なさに肩を縮こまらせてしまう。
「えっと、それは全然いいの。世の中にはすごい数の歌があるんだから、そりゃあ知らない歌の方が圧倒的に多いわけだし」
「でも有名な曲だったんでしょ?」
「っておばあちゃんは言ってた。あ、わたしのおばあちゃんはカラオケが得意で、『昼カラの佐藤』って呼ばれてるんだけど」
「うん、よく行ってるみたいだね」
っていうか何その二つ名!?
「何かいいアニメの曲がないかなって相談したら、これは絶対に男の子にウケる定番のアニメの歌だって言われたの」
「ああうん、すごく盛り上がりそうな曲ではあったよね。思わず足でリズムをとりたくなっちゃったし」
「でしょ!?」
「でもその話を聞いてやっぱり思ったんだけど。多分ちょっとだけおばあちゃんの情報が古いんじゃないかなって思うんだ」
西沢さんのおばあちゃんが、毎年100本以上放映される現行の最新アニメに精通しているとはさすがに思えないから。
それもう『昼カラの佐藤』じゃなくて『アニオタの佐藤』になっちゃうよね。
「もう、おばあちゃんってば……いっぱい練習したのになぁ……」
せっかく練習してきたアニソンを僕が知らなかったせいで、西沢さんががっくりと肩を落としてしまう。
「あ、でもでもすごくいい曲だったから、次に来るまでに僕も歌えるようにしてくるね。今度は一緒に歌おうよ。絶対盛り上がると思うんだ」
「あ、うん……!」
僕の言葉で再び笑顔になる西沢さん。
ころころと表情が変わるのも可愛いんだけど、やっぱり僕は笑顔の西沢さんが一番好きだな。
その後も僕と西沢さんはカラオケを楽しんだ。
今度はちょっと勇気を出してアニメアニメした曲も歌ってみたら、
「うんうん、これこれ! こういうのを期待してたの! ねぇねぇ、なんていうアニメの歌なの? 今度見て見るから教えて♪」
西沢さんがやけに喜んでくれて、僕はスマホでアニメのタイトルを見せながらつられて笑ってしまったのだった。
誰かと行く――西沢さんと行くカラオケって楽しいなぁ。
好きな歌手とか歌を聞いたり、歌って欲しい歌をお互いにリクエストとかもしながら。
僕はしみじみとそう思っていた。


