昨日別れ際に約束した通り、僕は西沢さんとカラオケデートに行くべく、土曜日にしては早起きをした。
しっかりと朝ごはんを食べてから、シャワーを浴びて寝汗を完全に洗い落とす。
「なんとなく身体付きがしっかりしてきた気がする……ようなしないような」
シャワーを浴びながら風呂場の鏡に映る自分の姿を見て、僕は何とはなしにつぶやいた。
休みの日もテスト期間中も。
毎日欠かさず続けている筋トレの成果が出ている……気がしなくもない。
試しに力こぶを作ってみたんだけど、前がどうだったのかを正直よく覚えていなかったので、比較することはできなかった。
「でも何でもやってみるもんだよね。少しずつ回数も増やせるようになったし、このまま頑張ろうっと」
運動はずっと苦手だったし、腕立て伏せ・腹筋・スクワットを20回するだけで最初は死ぬほどしんどかったんだけど。
根気よく続けて慣れてくると、意外なほど簡単に筋トレをこなせるようになっていたのだ。
今ではそれぞれ30回まで回数を増やしている。
西沢さんとお付き合いすることがなければ、こんな風に自分を変えようと思って筋トレを頑張ろうなんてしなかったはずだ。
最近は大きな声でハキハキ――は無理でも、ちゃんと相手に伝わるくらいにはしっかりと話せるようにもなっているし。
そんな風に僕を変えてくれたのは間違いなく西沢さんで。
だから僕は西沢さんとの出会いに本当に感謝をしていた。
そんなことを少し思いながら、身体を拭いてデート用の私服に着替える。
着ていく服は初めてデートした日に西沢さんと一緒に選んだものがいくつかあるので、2回目の私服デートではまだまだ全然悩む必要はない。
僕はファッションについて極めて疎いから、もし独力でコーディネートするとなると、どれだけ時間をかけて選んでも『最低限』をなんとかクリアするのが関の山だろう。
「でも西沢さんに選んでもらったおかげでそこに自信が持てるから、すごく気持ちが楽なんだよね」
しかも服を買いたい時は、また西沢さんが一緒に見てくれるって言うんだから心強いことこの上ない。
なにより、ファッションのことも知ってるよって見栄を張らなくてもよくなったのだ。
僕も年頃の男子だから、女の子からダサいと思われたくはない。
それが彼女である西沢さんならなおさらのことだ。
だから服を一緒に選んで欲しいなんてことは、僕は自分からは絶対に言い出せなかっただろう。
「そのお返しってわけじゃないんだけど、できれば僕も西沢さんに同じように何かをしてあげられたらいいんだけどな……」
そうは思っているものの。
残念ながら今はまだこれと言うのは思いつかないでいる僕だった。
とまぁそんな感じでデートの準備は万全に進んで。
僕は待ち合わせの時間に絶対に遅れないように、30分は早く着く計算で早めに家を出た。
これなら万が一、電車が遅延しても最悪早足で行けばギリギリ間に合うからだ。
やっぱり男の子としては、好きな女の子を待ちぼうけさせたくはないもんね。
そして特にトラブルがあるでもなく予定通りに30分前についた僕が、昨日約束した南改札口前でどうにもそわそわしながら待っていると、
「あ、西沢さんだ」
西沢さんが待ち合わせ時間の15分も前にやってきた。
15分前に来るなんてさすがは西沢さんだ。
遅刻という言葉とは無縁だね。
「あれ、佐々木くんがもういる? こんにちは、佐々木くん」
「こんにちは西沢さん」
「それとごめんなさい。早めに来たつもりだったんだけど、待たせちゃった?」
「ううん、僕も今来たところだから」
「ほんと?」
「ほんとほんと。ついさっき来たところだから。それと……」
「なぁに?」
「その、今日の私服も似合ってるね。すごく大人っぽい感じがする」
僕はまず最初に、西沢さんのおしゃれな私服を褒めた。
初デートでは西沢さんに「で? わたしは?」って聞かれるまでその事に思い至らなかったから、今日は絶対に最初に褒めようと心に誓っていたのだ。
しっかりと朝ごはんを食べてから、シャワーを浴びて寝汗を完全に洗い落とす。
「なんとなく身体付きがしっかりしてきた気がする……ようなしないような」
シャワーを浴びながら風呂場の鏡に映る自分の姿を見て、僕は何とはなしにつぶやいた。
休みの日もテスト期間中も。
毎日欠かさず続けている筋トレの成果が出ている……気がしなくもない。
試しに力こぶを作ってみたんだけど、前がどうだったのかを正直よく覚えていなかったので、比較することはできなかった。
「でも何でもやってみるもんだよね。少しずつ回数も増やせるようになったし、このまま頑張ろうっと」
運動はずっと苦手だったし、腕立て伏せ・腹筋・スクワットを20回するだけで最初は死ぬほどしんどかったんだけど。
根気よく続けて慣れてくると、意外なほど簡単に筋トレをこなせるようになっていたのだ。
今ではそれぞれ30回まで回数を増やしている。
西沢さんとお付き合いすることがなければ、こんな風に自分を変えようと思って筋トレを頑張ろうなんてしなかったはずだ。
最近は大きな声でハキハキ――は無理でも、ちゃんと相手に伝わるくらいにはしっかりと話せるようにもなっているし。
そんな風に僕を変えてくれたのは間違いなく西沢さんで。
だから僕は西沢さんとの出会いに本当に感謝をしていた。
そんなことを少し思いながら、身体を拭いてデート用の私服に着替える。
着ていく服は初めてデートした日に西沢さんと一緒に選んだものがいくつかあるので、2回目の私服デートではまだまだ全然悩む必要はない。
僕はファッションについて極めて疎いから、もし独力でコーディネートするとなると、どれだけ時間をかけて選んでも『最低限』をなんとかクリアするのが関の山だろう。
「でも西沢さんに選んでもらったおかげでそこに自信が持てるから、すごく気持ちが楽なんだよね」
しかも服を買いたい時は、また西沢さんが一緒に見てくれるって言うんだから心強いことこの上ない。
なにより、ファッションのことも知ってるよって見栄を張らなくてもよくなったのだ。
僕も年頃の男子だから、女の子からダサいと思われたくはない。
それが彼女である西沢さんならなおさらのことだ。
だから服を一緒に選んで欲しいなんてことは、僕は自分からは絶対に言い出せなかっただろう。
「そのお返しってわけじゃないんだけど、できれば僕も西沢さんに同じように何かをしてあげられたらいいんだけどな……」
そうは思っているものの。
残念ながら今はまだこれと言うのは思いつかないでいる僕だった。
とまぁそんな感じでデートの準備は万全に進んで。
僕は待ち合わせの時間に絶対に遅れないように、30分は早く着く計算で早めに家を出た。
これなら万が一、電車が遅延しても最悪早足で行けばギリギリ間に合うからだ。
やっぱり男の子としては、好きな女の子を待ちぼうけさせたくはないもんね。
そして特にトラブルがあるでもなく予定通りに30分前についた僕が、昨日約束した南改札口前でどうにもそわそわしながら待っていると、
「あ、西沢さんだ」
西沢さんが待ち合わせ時間の15分も前にやってきた。
15分前に来るなんてさすがは西沢さんだ。
遅刻という言葉とは無縁だね。
「あれ、佐々木くんがもういる? こんにちは、佐々木くん」
「こんにちは西沢さん」
「それとごめんなさい。早めに来たつもりだったんだけど、待たせちゃった?」
「ううん、僕も今来たところだから」
「ほんと?」
「ほんとほんと。ついさっき来たところだから。それと……」
「なぁに?」
「その、今日の私服も似合ってるね。すごく大人っぽい感じがする」
僕はまず最初に、西沢さんのおしゃれな私服を褒めた。
初デートでは西沢さんに「で? わたしは?」って聞かれるまでその事に思い至らなかったから、今日は絶対に最初に褒めようと心に誓っていたのだ。