離れていてもラインで西沢さんとやり取りを続けたこともあって、一人で家にいた去年までとは別次元に楽しかったゴールデンウィークが明け。
 僕と西沢さんは来たる中間テストに向けて一緒に勉強会を開催していた。

 場所は学校の図書室だ。

 今どき図書室で勉強する生徒はあまりいないのか、図書室に人はまばらでほとんど僕たちだけの貸し切り状態だった。

 人の出入りがある入り口から離れた一番奥の席に、西沢さんと隣り合って座る。

 しかし勉強会は特に何があるでもなく、つつがなく終了した。

「なんだか思ってたより静かに終わっちゃったね? ドラマとかでよくある、お互いに質問して答え合うみたいなイメージをしてたから、ちょっと残念だったかも」

「あー、それ僕もちょっとだけ思った」

「佐々木くんと家庭教師ごっこできるって思ったのになぁ」

「まぁわからないところがないに越したことはないんだけどね。順調にテスト勉強ができているわけだし」

 でもそうなった理由はなんとなくわかる。
 そもそも西沢さんはいつも真面目に授業を受けてるし、宿題を忘れたことも見たことがない。

 そして僕もそれなりに真面目に授業や宿題をこなしていて。
 しかもまだ高1の最初の中間テストだったから、普段からちゃんと勉強してさえいれば特に難しい内容でもなかったからだ。

「さすがにわざと質問して佐々木くんの勉強の邪魔をするのは、ちょっとどうかなって思ったんだよね」

「でも西沢さんが一緒だったおかげでさぼろうって気にはならなかったから、そこはすごく効果あったんじゃないかな」

「あ、それわたしも! 佐々木くんが見てる前でだらけたところは見せられないって思ったから、すごく集中してやれたんだぁ」

「ってことは、お互いに勉強会としては大成功だったわけだね」
「だねっ♪」

「明日もやる?」
「佐々木くんは明日も放課後空いてるの?」

「僕は帰宅部だから放課後はいつも空いてる感じ」
「わたしもだよ。じゃあまた明日の放課後も勉強会ってことでいい?」

「了解」
「あ、でもその前に」

 西沢さんがなにやらとても嬉しそうな顔をした。

「なに、どうしたの?」

「今から教え合いっこしない? 今日とか周りに誰もいないから、ちょっとくらい声だしてもオッケーだと思うし」

「そんなにしたかったんだね……」

「だって図書室でこっそり2人で教え合いっこをするって、ドラマみたいでちょっと憧れない?」

 小さな子供みたいに目を輝かせてイタズラっぽく笑う西沢さんは、それはもう可愛すぎて。
 僕としてはその申し出を断る理由なんてものは、どこにもありはしないのだった。


 それからテストまでの間。
 僕と西沢さんはほとんど毎日放課後の勉強会をした。

 そのおかげもあって、高校生になって最初の中間テストは、

「見て見て、19位でした!」
 西沢さんがなんと学年上位20位以内に入り。

「僕は47位、まぁまぁいい感じかな」
 僕も50位以内と想定を大きく超えた高順位を取ることができていた。

「効果抜群だったから、期末テストの前も一緒に勉強しようね佐々木くん」
「西沢さんさえよければ喜んで」

 そんな約束もして、僕たちの中間テストは無事に幕を閉じたのだった。