「ここが佐々木くんの部屋かぁ……あ、結構片付いてるね」
西沢さんが物珍しそうに部屋を見渡す。
「まぁ特に散らかす理由もないっていうか。物も少ないし」
僕はあまり物を買わないし、唯一買っているラノベや漫画は基本的に読んだら本棚に仕舞うから、実のところ散らかる理由がないんだよね。
そういうスッキリとした部屋だったから、西沢さんは当然のように本棚に興味を持った。
「あ、これ知ってる、ライトノベルって言うんでしょ? 絵がついた小説で、ラノベって略すんだよね」
「西沢さんって結構詳しいんだね。もしかしてラノベを読んだりするの?」
「ううん、わたしは読んでないかな。でも佐々木くんと柴田くんが教室で話してるのが時々聞こえてくるから」
「あ、そういうことね」
「ふふん、佐々木くんの会話には常に耳を澄ませてますから。何事も聞き洩らさない彩菜・イヤー!」
西沢さんはドヤ顔で言ったんだけど。
「いや……あの、監視されてるみたいでちょっと怖いかなって……」
「ええっ!? 酷いよぉ、佐々木くんのことをもっと知りたいなって思ってるだけなのに……」
「あ、えっと、ごめん……」
「えへへ、冗談だってば。ぜんぜん本気で言ってないし」
「そう?」
「そういうわけなので、わたしはあんまり詳しくないんだよね。でも佐々木くんが好きなことだから興味あるの。ねぇねぇ、せっかくだからちょっと見てみてもいい?」
そういうと西沢さんは本棚から1冊のラノベを取り出そうとしたんだけど――、
「ちょ、ちょっと待って西沢さん!?」
僕は西沢さんが取り出そうとした本のタイトルを見た瞬間、思わず制止の声を上げた。
でも時すでに遅し。
「……」
ひょいっと本棚から取り出して表紙を見た瞬間に、西沢さんの動きがピシッと固まった。
なぜならそこにあったのは、ヒロインのハーフエルフの女の子が軍服を半脱ぎして女の子座りをし、太ももやらお腹やらを際どく露出しているえっちなイラストだったからだ――!
「ら、ラノベは表紙で勝負みたいなところもあって、だからちょっと過激な絵が使われることが多いんだっ!」
僕は聞かれてもいないのに、つい言い訳を始めた。
「そ、そうなんだ……」
「今西沢さんが手に取った『クロウ戦記』も内容は結構ガチの戦記物なんだよ。高校の入学式の日に異世界転生したクロウが、30年前の大戦の大英雄クロフォルドに養子として拾われて帝国貴族クロウ=クロフォルドになって、出会ったヒロインたちとともに腐った帝国を打倒して新しい国を作るっていう戦記物で!」
(やばっ、変に早口になってるのが自分でもわかる……これはだめな早口だ)
でもどうしても言い訳せざるを得なかったんだ。
西沢さんに勘違いをされたくなかったから。
「う、うん……」
「表紙からは到底信じがたいかもしれないけど、だからその、決してえっちなラノベってだけじゃないんだよ」
「うん、佐々木くんがそう言うんならもちろん信じるし」
「ありがとう西沢さん!」
僕がホッとした──のも束の間。
「ちなみに『だけじゃない』ってことは、えっちなラノベでもあるんだよね?」
「…………そ、それはその。突き詰めればそういう要素も無きにしも非ずというか」
「佐々木くんのえっち」
「うぐ、ごめんなさい……」
「も、もう冗談だってば! そんな顔しないで、ねっ?」
「……冗談?」
「だって普段はにこにこしてて全然そんな風には見えないのに、やっぱり佐々木くんもえっちなことに興味がある年頃の男の子なんだなって思って。そんな風に佐々木くんのことを知ることができて嬉しかったの」
「西沢さん……」
僕は西沢さんの心根の清らかさに完全に心を打たれてしまっていた。
西沢さんが僕を知ろうとしてくれていることに、嬉しさで心がいっぱいになってしまっていた。
(本当に西沢さんは素敵すぎる女の子だよ……)
西沢さんが物珍しそうに部屋を見渡す。
「まぁ特に散らかす理由もないっていうか。物も少ないし」
僕はあまり物を買わないし、唯一買っているラノベや漫画は基本的に読んだら本棚に仕舞うから、実のところ散らかる理由がないんだよね。
そういうスッキリとした部屋だったから、西沢さんは当然のように本棚に興味を持った。
「あ、これ知ってる、ライトノベルって言うんでしょ? 絵がついた小説で、ラノベって略すんだよね」
「西沢さんって結構詳しいんだね。もしかしてラノベを読んだりするの?」
「ううん、わたしは読んでないかな。でも佐々木くんと柴田くんが教室で話してるのが時々聞こえてくるから」
「あ、そういうことね」
「ふふん、佐々木くんの会話には常に耳を澄ませてますから。何事も聞き洩らさない彩菜・イヤー!」
西沢さんはドヤ顔で言ったんだけど。
「いや……あの、監視されてるみたいでちょっと怖いかなって……」
「ええっ!? 酷いよぉ、佐々木くんのことをもっと知りたいなって思ってるだけなのに……」
「あ、えっと、ごめん……」
「えへへ、冗談だってば。ぜんぜん本気で言ってないし」
「そう?」
「そういうわけなので、わたしはあんまり詳しくないんだよね。でも佐々木くんが好きなことだから興味あるの。ねぇねぇ、せっかくだからちょっと見てみてもいい?」
そういうと西沢さんは本棚から1冊のラノベを取り出そうとしたんだけど――、
「ちょ、ちょっと待って西沢さん!?」
僕は西沢さんが取り出そうとした本のタイトルを見た瞬間、思わず制止の声を上げた。
でも時すでに遅し。
「……」
ひょいっと本棚から取り出して表紙を見た瞬間に、西沢さんの動きがピシッと固まった。
なぜならそこにあったのは、ヒロインのハーフエルフの女の子が軍服を半脱ぎして女の子座りをし、太ももやらお腹やらを際どく露出しているえっちなイラストだったからだ――!
「ら、ラノベは表紙で勝負みたいなところもあって、だからちょっと過激な絵が使われることが多いんだっ!」
僕は聞かれてもいないのに、つい言い訳を始めた。
「そ、そうなんだ……」
「今西沢さんが手に取った『クロウ戦記』も内容は結構ガチの戦記物なんだよ。高校の入学式の日に異世界転生したクロウが、30年前の大戦の大英雄クロフォルドに養子として拾われて帝国貴族クロウ=クロフォルドになって、出会ったヒロインたちとともに腐った帝国を打倒して新しい国を作るっていう戦記物で!」
(やばっ、変に早口になってるのが自分でもわかる……これはだめな早口だ)
でもどうしても言い訳せざるを得なかったんだ。
西沢さんに勘違いをされたくなかったから。
「う、うん……」
「表紙からは到底信じがたいかもしれないけど、だからその、決してえっちなラノベってだけじゃないんだよ」
「うん、佐々木くんがそう言うんならもちろん信じるし」
「ありがとう西沢さん!」
僕がホッとした──のも束の間。
「ちなみに『だけじゃない』ってことは、えっちなラノベでもあるんだよね?」
「…………そ、それはその。突き詰めればそういう要素も無きにしも非ずというか」
「佐々木くんのえっち」
「うぐ、ごめんなさい……」
「も、もう冗談だってば! そんな顔しないで、ねっ?」
「……冗談?」
「だって普段はにこにこしてて全然そんな風には見えないのに、やっぱり佐々木くんもえっちなことに興味がある年頃の男の子なんだなって思って。そんな風に佐々木くんのことを知ることができて嬉しかったの」
「西沢さん……」
僕は西沢さんの心根の清らかさに完全に心を打たれてしまっていた。
西沢さんが僕を知ろうとしてくれていることに、嬉しさで心がいっぱいになってしまっていた。
(本当に西沢さんは素敵すぎる女の子だよ……)