「じゃあわたしたちも行こっか」
西沢さんのおばあちゃんと別れた僕と西沢さんは、今度は僕の家へと向かった。
西町と東町は隣り合っているので、ゆっくりしたペースで話しながら歩いても15分ほどですぐに到着する。
「ふわっ、ここが佐々木くんのおうちかぁ……」
「そんなにマジマジ見なくても、普通の1戸建てだよ?」
「ううん、ここで佐々木くんが生まれ育ったんだと思うと、襟を正さずにはいられないもん。さあ行こう、賽は投げられた!」
「そこまでのものなの!? それってカエサルがローマに反逆する時の超有名なセリフだよね!?」
「女の子がカレシの家に行くんだもん、気合を入れて入れ過ぎってことはないんだから」
「そ、そうなんだ……まぁここで立って話しててもなんだからとりあえず入ってよ」
「では、お、お邪魔しますね?」
玄関のドアを開ける僕の後ろを西沢さんがおずおずとついてくる。
「ただいまー」
玄関で靴を脱ぎながら帰宅したことを告げると、
「おかえりなさい」
すぐに母さんから返事が返ってきた。
居間にいるみたいだ。
「ごめん母さん、今友達が来てるんだけどお茶を出してもらっていいかな」
「あら、直人が家に友達を呼ぶなんて珍しいわね。幼稚園の時以来かしら。せっかくだからご挨拶しておきましょうか――――えっ!? 友達って女の子だったの!? 直人がうちに女の子を!? しかもこんな可愛い子を連れてきたの!?」
居間から顔を出した母さんが、西沢さんを見てあんぐりと口を開けた。
信じられないものを見たって顔をしている。
母さんが僕をどんな風に思ってるかよくわかるね、うん。
そんな母さんに向かって西沢さんが自己紹介をする。
「は、初めまして。わたし、佐々木くんの――えっと直人くんのクラスメイトで西沢と申します。佐々木――直人くんにはいつもとても仲良くしてもらってます。今日は急にお伺いして申し訳ありませんでした」
不意に西沢さんから「直人くん」と2回も呼ばれて、僕は思わずドキリとしてしまった。
僕も母さんもどちらも佐々木だから、分かりやすいように下の名前で言いなおしたんだろう。
でも西沢さんの口から僕の名前が呼ばれたことに、僕の胸はどうしようもない程に昂ってしまったのだ。
「これはこれはご丁寧にどうも、西沢さん。こちらこそ、うちの直人がいつもお世話になっているみたいですわね。何のお構いも出来ませんが、どうぞごゆっくりしていってくださいな、おほほほほ……」
なに「おほほほほ……」って。
母さんがそんな笑い方するの初めて見たんだけど。
「じゃあ上がってよ西沢さん。僕の部屋は2階だから」
「で、ではお邪魔します」
少し緊張気味に靴を脱ぐ西沢さん。
後ろ向きに綺麗にそろえて置いているのが、すごく西沢さんらしかった。
「ちょ、ちょっと直人、わかっているとは思うけど人様の娘さんに粗相をするんじゃないわよ?」
「自分の家でする粗相ってなにさ……なにもしないよ」
「西沢さんもなにかあったら大声を出してちょうだいね。すぐに助けに行くからね」
「母さんは僕をもっと信用してもいいと思うんだ……」
「女の子を家に連れてきた息子を信用できる母親がいるわけないでしょ」
「ええっ、そういうものなの!?」
「あの、えっと、直人くんはすごく優しいので大丈夫だと思いますよ?」
「え、ああ、そう? 西沢さんがそう言うのならいいんだけど……」
「はい! 大丈夫ですから!」
とまぁ玄関でのそんなやりとりを経てから、僕の部屋に人生で初めて女の子が――彼女である西沢さんが足を踏み入れた。
西沢さんのおばあちゃんと別れた僕と西沢さんは、今度は僕の家へと向かった。
西町と東町は隣り合っているので、ゆっくりしたペースで話しながら歩いても15分ほどですぐに到着する。
「ふわっ、ここが佐々木くんのおうちかぁ……」
「そんなにマジマジ見なくても、普通の1戸建てだよ?」
「ううん、ここで佐々木くんが生まれ育ったんだと思うと、襟を正さずにはいられないもん。さあ行こう、賽は投げられた!」
「そこまでのものなの!? それってカエサルがローマに反逆する時の超有名なセリフだよね!?」
「女の子がカレシの家に行くんだもん、気合を入れて入れ過ぎってことはないんだから」
「そ、そうなんだ……まぁここで立って話しててもなんだからとりあえず入ってよ」
「では、お、お邪魔しますね?」
玄関のドアを開ける僕の後ろを西沢さんがおずおずとついてくる。
「ただいまー」
玄関で靴を脱ぎながら帰宅したことを告げると、
「おかえりなさい」
すぐに母さんから返事が返ってきた。
居間にいるみたいだ。
「ごめん母さん、今友達が来てるんだけどお茶を出してもらっていいかな」
「あら、直人が家に友達を呼ぶなんて珍しいわね。幼稚園の時以来かしら。せっかくだからご挨拶しておきましょうか――――えっ!? 友達って女の子だったの!? 直人がうちに女の子を!? しかもこんな可愛い子を連れてきたの!?」
居間から顔を出した母さんが、西沢さんを見てあんぐりと口を開けた。
信じられないものを見たって顔をしている。
母さんが僕をどんな風に思ってるかよくわかるね、うん。
そんな母さんに向かって西沢さんが自己紹介をする。
「は、初めまして。わたし、佐々木くんの――えっと直人くんのクラスメイトで西沢と申します。佐々木――直人くんにはいつもとても仲良くしてもらってます。今日は急にお伺いして申し訳ありませんでした」
不意に西沢さんから「直人くん」と2回も呼ばれて、僕は思わずドキリとしてしまった。
僕も母さんもどちらも佐々木だから、分かりやすいように下の名前で言いなおしたんだろう。
でも西沢さんの口から僕の名前が呼ばれたことに、僕の胸はどうしようもない程に昂ってしまったのだ。
「これはこれはご丁寧にどうも、西沢さん。こちらこそ、うちの直人がいつもお世話になっているみたいですわね。何のお構いも出来ませんが、どうぞごゆっくりしていってくださいな、おほほほほ……」
なに「おほほほほ……」って。
母さんがそんな笑い方するの初めて見たんだけど。
「じゃあ上がってよ西沢さん。僕の部屋は2階だから」
「で、ではお邪魔します」
少し緊張気味に靴を脱ぐ西沢さん。
後ろ向きに綺麗にそろえて置いているのが、すごく西沢さんらしかった。
「ちょ、ちょっと直人、わかっているとは思うけど人様の娘さんに粗相をするんじゃないわよ?」
「自分の家でする粗相ってなにさ……なにもしないよ」
「西沢さんもなにかあったら大声を出してちょうだいね。すぐに助けに行くからね」
「母さんは僕をもっと信用してもいいと思うんだ……」
「女の子を家に連れてきた息子を信用できる母親がいるわけないでしょ」
「ええっ、そういうものなの!?」
「あの、えっと、直人くんはすごく優しいので大丈夫だと思いますよ?」
「え、ああ、そう? 西沢さんがそう言うのならいいんだけど……」
「はい! 大丈夫ですから!」
とまぁ玄関でのそんなやりとりを経てから、僕の部屋に人生で初めて女の子が――彼女である西沢さんが足を踏み入れた。