それは突然の一言だった。
「ねぇねぇ、今日佐々木くんの家に遊びに行ってもいい?」
いつものように駅まで僕と一緒に帰っていた西沢さんが、唐突にそんなことを言ってきたのだ。
「え、今からってこと?」
「今日おばあちゃんちに届け物があるんだよね。そのついでに佐々木くんのおうちに行ってみたいなって思って。ほら、佐々木くんの家っておばあちゃんちの近くなんでしょ?」
「そうだよ、ゆっくり歩いても15分かからないくらいかな?」
「じゃあそのついでに、ちょっとだけ寄っていくのはダメかな? あ、もちろん佐々木くんに用事とかあるなら全然構わないんだけど」
西沢さんが上目づかいでおずおずと尋ねてくる。
「ううん、僕は基本的に放課後に用事はないからそれは問題ないんだけど…………じゃあ今から来る?」
そんな可愛くお願いしてくる西沢さんをお断りするなんて選択肢が、僕にあろうはずはないのだった。
ちょっとだけ答えに間があったのは、ラノベを出しっぱにしていなかったかなと頭の中で部屋の現状を確認していたからだ。
だってラノベの表紙って女の子の際どいイラストが多いから、彼女には見られたくないもんね。
えっちな本とか思われそうだから。
「やった♪」
「でも西沢さんが来ると思ってなかったから、掃除とかしてなくて普段使いのままなんだよね」
「あ、結構散らかってたりする? それならまた今度でもいいよ?」
「そんなこともないんだけど、まぁあまり期待はしないでね」
「残念ですがわたしは初めて男の子のおうちに行くわけです。なので当然期待はしちゃいます。えっちな本とか」
「ないから」
僕は即答した。
「ほんとかなぁ。あ、最近はスマホでえっちな画像とか?」
「……ないよ」
悲しいかな、僕は即答することができなかった。
だってそりゃ、男子高校生のスマホの中にはえっちな画像くらいあるでしょ?
深夜アニメのお色気シーンとか、人気絵師さんがツイッターで公開したえっちな二次創作とか保存してあって当たり前でしょ!?
「ふーん……」
西沢さんがジト目になる。
まぁそうだよね。
さすがの西沢さんもこれは信じないよね。
僕が西沢さんだったとしても信じないだろうし。
でもこれだけは「ある」とは絶対に言えない話題だから。
無いことにして押し通すしかないんです。
「ほら、そんなことより行こうよ」
「うん♪」
でも僕がそう提案すると西沢さんはすぐに笑顔になったのだった。
そういうわけで、僕と西沢さんはJRに乗って3駅隣の僕の地元駅で降りると、まずは西沢さんのおばあちゃんちに向かった。
「おお彩菜、よう来たの。それに佐々木くんも一緒とは、仲良くやってるようでなによりじゃ」
「えへへ、おかげさまで。はいこれお母さんから」
「わざわざすまんのう。区役所に出すのにどうしても必要な書類があっての」
「ううん、全然。それに今から佐々木くんの家に遊びに行くことになってるから」
「ほぅ、そうかそうか、それはええことだの。でもあまり向こうの家の方に迷惑をかけちゃいかんぞ?」
「もう子供じゃないんだからそんなことしないってば」
「そうは言っても彩菜は時々信じられない失敗をするからのぅ。佐々木くんも、この子が失敗しても多めに見てやってくれると嬉しいの」
「あはは。はい、心得ました」
「もう、その話はいいじゃない、誰にでも失敗はあるものなんです。ところでおばあちゃんは今からお出かけ?」
「今日はカラオケ仲間と約束があるでの、夜までカラオケなんじゃ」
「相変わらずおばあちゃんは元気だね」
「残り少ない人生じゃ、どうせ生きるなら元気に生きんともったいないからの。おっとそろそろいい時間じゃから行ってくるでの」
「行ってらっしゃい。楽しんで来てね」
「彩菜もの」
そう言うと西沢さんのおばあちゃんは軽快な足取りで、駅前のほうへと歩いていった。
そんなとても仲が良さそうな二人の関係を見て、僕はほっこりしたのだった。
「ねぇねぇ、今日佐々木くんの家に遊びに行ってもいい?」
いつものように駅まで僕と一緒に帰っていた西沢さんが、唐突にそんなことを言ってきたのだ。
「え、今からってこと?」
「今日おばあちゃんちに届け物があるんだよね。そのついでに佐々木くんのおうちに行ってみたいなって思って。ほら、佐々木くんの家っておばあちゃんちの近くなんでしょ?」
「そうだよ、ゆっくり歩いても15分かからないくらいかな?」
「じゃあそのついでに、ちょっとだけ寄っていくのはダメかな? あ、もちろん佐々木くんに用事とかあるなら全然構わないんだけど」
西沢さんが上目づかいでおずおずと尋ねてくる。
「ううん、僕は基本的に放課後に用事はないからそれは問題ないんだけど…………じゃあ今から来る?」
そんな可愛くお願いしてくる西沢さんをお断りするなんて選択肢が、僕にあろうはずはないのだった。
ちょっとだけ答えに間があったのは、ラノベを出しっぱにしていなかったかなと頭の中で部屋の現状を確認していたからだ。
だってラノベの表紙って女の子の際どいイラストが多いから、彼女には見られたくないもんね。
えっちな本とか思われそうだから。
「やった♪」
「でも西沢さんが来ると思ってなかったから、掃除とかしてなくて普段使いのままなんだよね」
「あ、結構散らかってたりする? それならまた今度でもいいよ?」
「そんなこともないんだけど、まぁあまり期待はしないでね」
「残念ですがわたしは初めて男の子のおうちに行くわけです。なので当然期待はしちゃいます。えっちな本とか」
「ないから」
僕は即答した。
「ほんとかなぁ。あ、最近はスマホでえっちな画像とか?」
「……ないよ」
悲しいかな、僕は即答することができなかった。
だってそりゃ、男子高校生のスマホの中にはえっちな画像くらいあるでしょ?
深夜アニメのお色気シーンとか、人気絵師さんがツイッターで公開したえっちな二次創作とか保存してあって当たり前でしょ!?
「ふーん……」
西沢さんがジト目になる。
まぁそうだよね。
さすがの西沢さんもこれは信じないよね。
僕が西沢さんだったとしても信じないだろうし。
でもこれだけは「ある」とは絶対に言えない話題だから。
無いことにして押し通すしかないんです。
「ほら、そんなことより行こうよ」
「うん♪」
でも僕がそう提案すると西沢さんはすぐに笑顔になったのだった。
そういうわけで、僕と西沢さんはJRに乗って3駅隣の僕の地元駅で降りると、まずは西沢さんのおばあちゃんちに向かった。
「おお彩菜、よう来たの。それに佐々木くんも一緒とは、仲良くやってるようでなによりじゃ」
「えへへ、おかげさまで。はいこれお母さんから」
「わざわざすまんのう。区役所に出すのにどうしても必要な書類があっての」
「ううん、全然。それに今から佐々木くんの家に遊びに行くことになってるから」
「ほぅ、そうかそうか、それはええことだの。でもあまり向こうの家の方に迷惑をかけちゃいかんぞ?」
「もう子供じゃないんだからそんなことしないってば」
「そうは言っても彩菜は時々信じられない失敗をするからのぅ。佐々木くんも、この子が失敗しても多めに見てやってくれると嬉しいの」
「あはは。はい、心得ました」
「もう、その話はいいじゃない、誰にでも失敗はあるものなんです。ところでおばあちゃんは今からお出かけ?」
「今日はカラオケ仲間と約束があるでの、夜までカラオケなんじゃ」
「相変わらずおばあちゃんは元気だね」
「残り少ない人生じゃ、どうせ生きるなら元気に生きんともったいないからの。おっとそろそろいい時間じゃから行ってくるでの」
「行ってらっしゃい。楽しんで来てね」
「彩菜もの」
そう言うと西沢さんのおばあちゃんは軽快な足取りで、駅前のほうへと歩いていった。
そんなとても仲が良さそうな二人の関係を見て、僕はほっこりしたのだった。