僕は冴えない底辺男子だ。
背も低いし特技もない、勉強も運動もできやしない。
だから僕は、僕という人間をどうしても誇れない。
他人と比べるたびに劣等感を抱いてしまう。
だけどそんな僕でも、西沢さんが好きになってくれたことだけは誇れるから!
だから僕は、僕を好きになってくれた西沢さんのためにも。
西沢さんの彼氏だってことだけは堂々と胸を張って、ちゃんと言葉にして言うんだ!
「僕と西沢さんはお互いに好き合ってる正真正銘のカップルです。なんと言われようと、それが事実です」
僕はその一念をよりどころに、胸倉を掴んでくるサッカー部キャプテンと至近距離でにらみ合う。
心臓が口からとび出そうなくらいにバクバク言っていた。
サッカー部キャプテンの後ろにはバスケ部のキャプテンと柔道部の主将もいるし、3対1で実力行使されると勝ち目はない。
それでも僕は決して目を逸らしはしなかった。
どれだけ睨まれても、視線を外さないでいることが。
それがなんの取り柄もない僕ができる、たった一つの西沢さんへの愛の証明方法だから――!
そのまましばらくサッカー部キャプテンと真正面からにらみ合っていると、突然ふっと胸倉を掴んでいた手から力が抜けた。
「いい眼をしているね」
「え?」
「ごめんね、君の覚悟を試したかったんだ」
「は、はぁ……」
「どうやら君はいっぱしの男みたいだね。怖い目にあわせて悪かった。この通りだ、どうか許してくれないだろうか」
サッカー部キャプテンは突然、穏やかな口調でそう言うと、その場で見事な土下座した。
後ろの2人もそれに続いて土下座をする。
「えっと、あの、いったいなにが……? でもまずはとりあえず立ってもらっていいですか?」
3年生の先輩がたを土下座させたまま話すのはなんとも心苦しかったので、僕は取り急ぎ3人に立ってもらった。
「君が西沢の彼女に相応しい男かどうか見定めさせてもらったんだ」
そう言ったサッカー部のキャプテンは、さっきまでの怖い顔から一転、女の子が見たら胸を高鳴らせること間違いなしの、柔和なイケメンスマイルを浮かべていた。
「は、はぁ……見定める、ですか?」
「そうだ。僕にすごまれても君はわずかも目を逸らしはしなかった。聞いていた話と違って、ずいぶんと男らしいじゃないか」
「そ、それはどうも……」
先輩は僕に関するどんな話を聞いてたのかな?
もし根暗なぼっち陰キャってことなら、合ってると思いますよ?
「まったく、ヘタレな陰キャに西沢が脅されてるかも、なんて聞かされたからちょっと強引な手を使ったんだけど。なかなかどうしていい根性してるじゃないか」
「あ、ありがとうございます」
「君みたいなタイプは磨けば伸びると思うんだ、よかったらサッカー部に入らないかい?」
「えっと、僕は運動はあまり得意じゃなくて……」
「人間の身体ってのはね、理論に従って動かす訓練さえすれば誰でも正しく動くようになるものなんだよ」
「あ、そうなんですね」
「で、どうかな?」
「えっと、その……やっぱり遠慮しておきます」
「そうか、残念だな」
サッカー部キャプテンは本当に残念そうに言った。
なんかすごくいい人っぽいよね?
(ってことはさっきのは全部演技だったのか)
「それで僕は皆さんのお眼鏡にかなったということでしょうか?」
「もちろんさ。西沢が君を選んだのにも納得できたよ。彼女は男を見る目もあるみたいだね」
「そう……なんですかね?」
スクールカースト最上位の一人であるサッカー部キャプテンからやたらと高評価を受けた僕は、なんとも居心地が悪くて苦笑いをしたのだった。
「もし何か困ったことがあったら言ってくれ、俺たちが力になるから。だから絶対に西沢を幸せにしてやってくれよ」
「応援ありがとうございます。そうなるように全力を尽くします」
こうして先輩方から屋上に呼び出された一件は、途中で思っていた展開とは全然違って、とても平和に解決したのだった。
背も低いし特技もない、勉強も運動もできやしない。
だから僕は、僕という人間をどうしても誇れない。
他人と比べるたびに劣等感を抱いてしまう。
だけどそんな僕でも、西沢さんが好きになってくれたことだけは誇れるから!
だから僕は、僕を好きになってくれた西沢さんのためにも。
西沢さんの彼氏だってことだけは堂々と胸を張って、ちゃんと言葉にして言うんだ!
「僕と西沢さんはお互いに好き合ってる正真正銘のカップルです。なんと言われようと、それが事実です」
僕はその一念をよりどころに、胸倉を掴んでくるサッカー部キャプテンと至近距離でにらみ合う。
心臓が口からとび出そうなくらいにバクバク言っていた。
サッカー部キャプテンの後ろにはバスケ部のキャプテンと柔道部の主将もいるし、3対1で実力行使されると勝ち目はない。
それでも僕は決して目を逸らしはしなかった。
どれだけ睨まれても、視線を外さないでいることが。
それがなんの取り柄もない僕ができる、たった一つの西沢さんへの愛の証明方法だから――!
そのまましばらくサッカー部キャプテンと真正面からにらみ合っていると、突然ふっと胸倉を掴んでいた手から力が抜けた。
「いい眼をしているね」
「え?」
「ごめんね、君の覚悟を試したかったんだ」
「は、はぁ……」
「どうやら君はいっぱしの男みたいだね。怖い目にあわせて悪かった。この通りだ、どうか許してくれないだろうか」
サッカー部キャプテンは突然、穏やかな口調でそう言うと、その場で見事な土下座した。
後ろの2人もそれに続いて土下座をする。
「えっと、あの、いったいなにが……? でもまずはとりあえず立ってもらっていいですか?」
3年生の先輩がたを土下座させたまま話すのはなんとも心苦しかったので、僕は取り急ぎ3人に立ってもらった。
「君が西沢の彼女に相応しい男かどうか見定めさせてもらったんだ」
そう言ったサッカー部のキャプテンは、さっきまでの怖い顔から一転、女の子が見たら胸を高鳴らせること間違いなしの、柔和なイケメンスマイルを浮かべていた。
「は、はぁ……見定める、ですか?」
「そうだ。僕にすごまれても君はわずかも目を逸らしはしなかった。聞いていた話と違って、ずいぶんと男らしいじゃないか」
「そ、それはどうも……」
先輩は僕に関するどんな話を聞いてたのかな?
もし根暗なぼっち陰キャってことなら、合ってると思いますよ?
「まったく、ヘタレな陰キャに西沢が脅されてるかも、なんて聞かされたからちょっと強引な手を使ったんだけど。なかなかどうしていい根性してるじゃないか」
「あ、ありがとうございます」
「君みたいなタイプは磨けば伸びると思うんだ、よかったらサッカー部に入らないかい?」
「えっと、僕は運動はあまり得意じゃなくて……」
「人間の身体ってのはね、理論に従って動かす訓練さえすれば誰でも正しく動くようになるものなんだよ」
「あ、そうなんですね」
「で、どうかな?」
「えっと、その……やっぱり遠慮しておきます」
「そうか、残念だな」
サッカー部キャプテンは本当に残念そうに言った。
なんかすごくいい人っぽいよね?
(ってことはさっきのは全部演技だったのか)
「それで僕は皆さんのお眼鏡にかなったということでしょうか?」
「もちろんさ。西沢が君を選んだのにも納得できたよ。彼女は男を見る目もあるみたいだね」
「そう……なんですかね?」
スクールカースト最上位の一人であるサッカー部キャプテンからやたらと高評価を受けた僕は、なんとも居心地が悪くて苦笑いをしたのだった。
「もし何か困ったことがあったら言ってくれ、俺たちが力になるから。だから絶対に西沢を幸せにしてやってくれよ」
「応援ありがとうございます。そうなるように全力を尽くします」
こうして先輩方から屋上に呼び出された一件は、途中で思っていた展開とは全然違って、とても平和に解決したのだった。