佐々木くんとの初めてのデートを終えて家に帰ったわたしは、帰るなり部屋に直行して着替えもせずにベッドに飛び込んだ。

 そのままベッドの上でゴロゴロバタバタとはしたなく左右に転がる。
 顔からはにやにやと笑みがこぼれてしまって、自分ではもう抑えようがなかった。

『その子から手を離してください!』
『僕の彼女に乱暴はやめてください!』
『西沢さんは僕の彼女です。だからその手を今すぐ離して下さい』
『はい、僕は――僕がその子の彼氏です』

 佐々木くんの言葉を思い出すだけで、嬉しさと気恥ずかしさが胸いっぱいに込み上げてくる。
 胸がキュンと高鳴ってくる。

「すっごくかっこ良かったなぁ……」

 チンピラみたいな不良たちに睨みつけられても目を逸らさずに、普段の物静かな口調とは全然違った大きな声で、わたしを彼女だと言って守ってくれた佐々木くん。

「やっぱり佐々木くんは優しいよね。おばあちゃんも助けてくれたし、今日はわたしのことも助けてくれたもん」

 佐々木くんなら、きっと何があってもわたしを見捨てないはず。
 佐々木くんなら、どんな状況でもわたしを裏切らないはず。
 佐々木くんなら、あの時みたいにわたしを一人ぼっちにしないはず――。

「――ってやめやめっ! せっかくこんなに幸せな気持ちになってるのに、昔のことを思い出して暗い気持ちになったら馬鹿らしいもん」

 わたしはもう一度、デートの時のかっこいい佐々木くんの姿を思い出す。

「佐々木くん、好き。大好き。わたしを守ってくれる優しい佐々木くんが、わたしは大好きなんだから……」

 佐々木くんのことを考えるだけで、好きって気持ちが無限に溢れてくる。
 溢れすぎて止まらない。

 だからわたしはベッドの上でしばらく、ゴロゴロジタバタし続けたのだった。