「佐々木くん、大丈夫だった!?」

「それはこっちのセリフだってば。西沢さんこそ腕を掴まれてたでしょ? 大丈夫だった? あ、ちょっと赤くなってるよ」

 西沢さんの手首は掴まれていたところが少し赤くなっていた。
 肌が白いぶんだけとても目立つ。

 相当痛くて怖かったに違いない。

「こんなの全然平気だもん。それよりごめんね佐々木くん、待たせちゃって。あの人たち何を言っても聞いてくれなくて。手も離してくれないし、わたしどうしたらいいかわからなくて──」

「ううん、西沢さんは被害者なんだから謝る必要なんてこれっぽちもないから。ほんと無事でよかった、遅いなって思って見に来て正解だったよ」

「本当にありがとうございました、佐々木くん」

「だからいいってば。それに僕は西沢さんのか、彼氏なんだから、だから彼女を守るのは当然だし」

 僕はもう一度勇気を出して、そんなセリフを言った。

「ふふっ、そうだよね、彼氏だもんね、彼女を守るのは当然だよね。手を離せ、僕がその子の彼氏だぞって言った時の佐々木くん、とってもカッコよかったよ?」

「もう、茶化さないでよね西沢さん、すごく必死だったんだから。あとそんなワイルドな言い方は絶対してないからね?」

 万が一ケンカになったら勝つ自信は皆無だったから、なるべく相手を怒らせないようにもっとマイルドに言ったはずだ。

 でも、さっきは西沢さんを助けなくちゃって思って必死だったけど、すっかり落ち着いた今になって思い出すと、なに言っちゃってんの僕!と、顔から火が出そうなくらいに恥ずかしかった。

「茶化してないもーん、ほんとにカッコ良かったんだもーん。自慢の彼氏なんだもーん」

「もう西沢さんってば……」

 でも頑張ったかいはあった。
 行動して良かった。

 だって西沢さんのこの笑顔を取り戻せたんだから──なんてさっきの自分の選択をちょっとだけ誇らしく思っていると、

「だからこれは感謝の気持ちです」
 西沢さんがそう言いながらギュっと僕に抱きついたきたのだ――!

「西沢さん!? えっとあの!」
 突然の出来事に、僕は緊張と困惑で頭が大混乱してしまっていた。

 だ、だって西沢さんが抱きついてきたんだよ!?

 しかも僕の両腕ときたら、つい反射的に西沢さんを抱き返してしまっていて──!?
 つまり今、僕と西沢さんは抱き合っちゃってるってわけなんだけど!

(西沢さんの身体が僕の腕の中にある……!)

 じんわりと優しい温もりと、甘くていい匂いと。
 そして男子とは決定的に違っている女の子特有の柔らかさがこれでもかと伝わってきて。

 僕は緊張のあまり、何をどうしたらいいのかさっぱりわからなくなってしまっていた。
 頭の中が完全にテンパってしまっている。

 しかも僕たちは背が同じくらいの高さなので、だから西沢さんの柔らかい頬が僕の頬に直に触れてしまったりとかしちゃっているのだ。

 そんな状況でテンパるなっていう方が、無理な話でしょ!?