絶対に西沢さんを助けなきゃという気持ちで頭がいっぱいだった僕は、
「その子から手を離してください!」
自分でも信じられないくらいに大きな声で叫ぶように言った。
「ぁ、佐々木くん……」
僕の顔を見た西沢さんが、怯えから一転ホッとした顔を見せる。
すごく怖かったんだろう、その目は少し赤くなっていた。
「あ? なんだてめぇは? 見てわかんだろ、俺ら取り込み中なんだよ、とっととどっか行けよオラ、ケンカ売ってんのか?」
背の高い金髪チャラ男が脅すような低い声で、顔を歪めてすごんでくる。
はっきり言ってめちゃくちゃ怖かった。
控えめに言ってチンピラ丸出しなその振る舞いは、世界第三位の経済大国に生まれ、他国がうらやむ高等教育を権利かつ義務として幼いころから享受してきたはずの文明的な人間とは到底思えない。
だけどそんな風にドスの効いた声ですごまれても、僕は一歩も引かなかった。
本能的な恐怖を懸命に飲み込み、震えそうな足でしっかり床を踏みしめ、完全に震えてる手でグッとこぶしを握って金髪チャラ男に正対すると、僕は腹の底から大きな声を出す!
「僕の彼女に乱暴はやめてください!」
「あ? 彼女だと?」
金髪チャラ男が不快そうに目を細めながら、僕と西沢さんを交互に見る。
「そうです、その子は――西沢さんは僕の彼女です。だからその手を今すぐ離して下さい」
「なに、お前がこのきれいこちゃんのカレシなの?」
「はい、僕は――僕がその子の彼氏です」
「佐々木くん……!」
彼氏だと言い切った僕を、チンピラがさらに目を細めてにらみつけてくる。
お前が彼氏とか釣り合ってねぇだろ、嘘つくんじゃねぇよバカ――みたいなことを言って笑われるのかと覚悟していたら、
「チッ、男持ちかよ。行くぞ!」
「うぃっすアニキ」
しかし金髪チャラ男は意外とすぐに諦めてくれた。
そのまま僕たちに背中を向けると、二人連れだってこの場を立ち去っていく。
「ああもう、また空振りかよ」
「だから俺最初から言ったじゃないっすか、あんな綺麗な子が男と一緒じゃないわけないって」
「あ? お前んなこと言ったか? 適当言ってんじゃねぇよ」
「言いましたって。ちょ、いちいち殴んないでくださいよ! まったくアニキはすぐ手を出すんだから。この前もリーマン小突いてサツにパクられたっしょ? 相手が大事にしないでくれたから、一晩しぼられただけで済んだんすからね?」
「うっせーよ、昔のことイチイチ蒸し返すんじゃねえ」
「昔じゃなくてつい先週のことっすよ。少しは懲りてくださいよ、日光の猿じゃないんすから。こんなことしてたら、いつかヤバいのに当たっちまいますよ?」
「うっせぇな黙れ」
「すんませんっしたぁ!」
そんなやりとりをしながら――もう僕らには興味がなくなったのか――金髪チャラ男たちは一度も振り返ることなくモールの奥の方へと消えていったのだった。
「い、行ったかな? 行ったよね? うん、行った! はぁ、緊張した……」
チンピラたちが見えなくなってやっと極度の緊張感から解き放たれた僕は、両ひざに手をついて大きく息を吐いた。
足がガクガクでもうへたり込んじゃいそう。
そんなへなちょこ過ぎる僕に、西沢さんがすぐに駆け寄ってきた。
「その子から手を離してください!」
自分でも信じられないくらいに大きな声で叫ぶように言った。
「ぁ、佐々木くん……」
僕の顔を見た西沢さんが、怯えから一転ホッとした顔を見せる。
すごく怖かったんだろう、その目は少し赤くなっていた。
「あ? なんだてめぇは? 見てわかんだろ、俺ら取り込み中なんだよ、とっととどっか行けよオラ、ケンカ売ってんのか?」
背の高い金髪チャラ男が脅すような低い声で、顔を歪めてすごんでくる。
はっきり言ってめちゃくちゃ怖かった。
控えめに言ってチンピラ丸出しなその振る舞いは、世界第三位の経済大国に生まれ、他国がうらやむ高等教育を権利かつ義務として幼いころから享受してきたはずの文明的な人間とは到底思えない。
だけどそんな風にドスの効いた声ですごまれても、僕は一歩も引かなかった。
本能的な恐怖を懸命に飲み込み、震えそうな足でしっかり床を踏みしめ、完全に震えてる手でグッとこぶしを握って金髪チャラ男に正対すると、僕は腹の底から大きな声を出す!
「僕の彼女に乱暴はやめてください!」
「あ? 彼女だと?」
金髪チャラ男が不快そうに目を細めながら、僕と西沢さんを交互に見る。
「そうです、その子は――西沢さんは僕の彼女です。だからその手を今すぐ離して下さい」
「なに、お前がこのきれいこちゃんのカレシなの?」
「はい、僕は――僕がその子の彼氏です」
「佐々木くん……!」
彼氏だと言い切った僕を、チンピラがさらに目を細めてにらみつけてくる。
お前が彼氏とか釣り合ってねぇだろ、嘘つくんじゃねぇよバカ――みたいなことを言って笑われるのかと覚悟していたら、
「チッ、男持ちかよ。行くぞ!」
「うぃっすアニキ」
しかし金髪チャラ男は意外とすぐに諦めてくれた。
そのまま僕たちに背中を向けると、二人連れだってこの場を立ち去っていく。
「ああもう、また空振りかよ」
「だから俺最初から言ったじゃないっすか、あんな綺麗な子が男と一緒じゃないわけないって」
「あ? お前んなこと言ったか? 適当言ってんじゃねぇよ」
「言いましたって。ちょ、いちいち殴んないでくださいよ! まったくアニキはすぐ手を出すんだから。この前もリーマン小突いてサツにパクられたっしょ? 相手が大事にしないでくれたから、一晩しぼられただけで済んだんすからね?」
「うっせーよ、昔のことイチイチ蒸し返すんじゃねえ」
「昔じゃなくてつい先週のことっすよ。少しは懲りてくださいよ、日光の猿じゃないんすから。こんなことしてたら、いつかヤバいのに当たっちまいますよ?」
「うっせぇな黙れ」
「すんませんっしたぁ!」
そんなやりとりをしながら――もう僕らには興味がなくなったのか――金髪チャラ男たちは一度も振り返ることなくモールの奥の方へと消えていったのだった。
「い、行ったかな? 行ったよね? うん、行った! はぁ、緊張した……」
チンピラたちが見えなくなってやっと極度の緊張感から解き放たれた僕は、両ひざに手をついて大きく息を吐いた。
足がガクガクでもうへたり込んじゃいそう。
そんなへなちょこ過ぎる僕に、西沢さんがすぐに駆け寄ってきた。