「ごめん西沢さん! つい集中しすぎちゃって全然周りを見れてなくて!」
僕は慌てて西沢さんの方に向き直るとごめんなさいをした。
CPU戦が再開してるけど、そんなことはもうどうでもよかった。
(や、やってしまった……! ゲーセンでゲームに熱中し過ぎてデート中の彼女をほったらかすなんていう、最低最悪ムーブをかましてしまった……!)
デートはお互いに楽しむもの、自分だけが楽しむのはデートじゃないってネットに書いてあった、まさにその通りのダメな行動をとってしまうなんて!
「――――」
僕は必死に謝ったんだけど、西沢さんは返事すらしてはくれなかった。
彼女そっちのけでゲームに熱中していた僕に、心底呆れているのかもしれない。
今わかった。
デートでゲーセンに行くなとは、こういうことだったのだ。
得意かつ好きな分野では負けたくないという人間心理が働いてしまい、優先順位を間違えてしまうから。
だから絶対ゲーセンには行くなと書いてあったのだ。
僕は今さらながらにそのことを理解した。
後から悔いるから後悔と言うのだとはいえ。
よりにもよってデートをしている西沢さんをそっちのけにして、格ゲーの対人戦に熱中してしまうなんて。
あまりのやらかしの大きさに僕は完全に涙目になる。
熱戦の末に格上の強敵に勝利した高揚感は、もはや完全に地平線の彼方に吹っ飛んでしまっていた。
「本当にごめん、西沢さんのことを無視するつもりはなかったんだ。相手が強かったから、つい対戦に集中しちゃって。それで――」
僕は必死に理由を説明する。
でもどこからどう見てもそれは無様な言い訳だ。
言い訳をすると余計にみっともないとも思ったんだけど、それでも言葉を尽くさずにはいられなくて。
ずっと無言のままの西沢さんに、僕は必死の謝罪と言い訳を重ねてなんとか機嫌を直してもらおうとしてたんだけど――、
「佐々木くんすごいっ!」
突然、西沢さんが両手の平を胸の前でポンと合わせて興奮したように言った。
「え? な、なにが?」
ずっと黙り込んでいた西沢さんが突然何を言い出したのか理解できなかった僕は、必死に言葉の意味を考える。
(もしかして彼女をほったらかしてゲームに熱中するなんてすごいね、っていう皮肉なんだろうか?)
心優しい西沢さんですら、そんな皮肉も言いたくなるほどの酷い放置プレイを、僕はやらかしてしまったんだ――、
「最後、大ピンチだったのに大逆転だったよね!」
だけど西沢さんの口から出たのは、思いもよらない言葉だった。
「え? ああうん。そうだったんだけど、そんなことより――」
「わたし最後はもう、ああ負けちゃうって、ハラハラしながら見てたんだから。でも勝ってくれて嬉しかったぁ。応援してた甲斐があったよ」
さっきの勝利を、まるで自分のことのように嬉しそうに喜んでくれる西沢さん。
「ありがとう西沢さん。でも熱中しすぎてごめんね、次からは気を付けるから」
というかもうゲーセンには来ないから。
来てもプリクラだけして帰るから。
「気を付ける? なんで? 集中する佐々木くんの横顔、すごくカッコよかったよ? 惚れなおしちゃったし――なんちゃって、このこのぉっ!」
「そ、そう? だったらいいんだけど」
「もう、せっかく勝ったのに変な佐々木くん――って、ゲームを放置してていいの? 負けちゃうよ?」
言いながら、西沢さんは棒立ちのままCPUに1本目をパーフェクトゲームされた画面を指差した。
「そうだね、うん、じゃあ続きをやろうかな」
僕は西沢さんがちっとも怒ってないことに胸をなでおろすと、CPU戦を再開する。
幸運にも西沢さんは、放っておかれたとは思わずにいてくれたみたいだった。
でも僕は今回はラッキーだったと思うことにする。
こんなのはそう何度もあることじゃない。
だからこれからはちゃんとお互いが楽しめるようなデートをするんだと、改めて心に誓ったのだった。
西沢さんの優しさにいいように甘えるだけの、そんなダサい男のままではいたくなかったから。
僕は慌てて西沢さんの方に向き直るとごめんなさいをした。
CPU戦が再開してるけど、そんなことはもうどうでもよかった。
(や、やってしまった……! ゲーセンでゲームに熱中し過ぎてデート中の彼女をほったらかすなんていう、最低最悪ムーブをかましてしまった……!)
デートはお互いに楽しむもの、自分だけが楽しむのはデートじゃないってネットに書いてあった、まさにその通りのダメな行動をとってしまうなんて!
「――――」
僕は必死に謝ったんだけど、西沢さんは返事すらしてはくれなかった。
彼女そっちのけでゲームに熱中していた僕に、心底呆れているのかもしれない。
今わかった。
デートでゲーセンに行くなとは、こういうことだったのだ。
得意かつ好きな分野では負けたくないという人間心理が働いてしまい、優先順位を間違えてしまうから。
だから絶対ゲーセンには行くなと書いてあったのだ。
僕は今さらながらにそのことを理解した。
後から悔いるから後悔と言うのだとはいえ。
よりにもよってデートをしている西沢さんをそっちのけにして、格ゲーの対人戦に熱中してしまうなんて。
あまりのやらかしの大きさに僕は完全に涙目になる。
熱戦の末に格上の強敵に勝利した高揚感は、もはや完全に地平線の彼方に吹っ飛んでしまっていた。
「本当にごめん、西沢さんのことを無視するつもりはなかったんだ。相手が強かったから、つい対戦に集中しちゃって。それで――」
僕は必死に理由を説明する。
でもどこからどう見てもそれは無様な言い訳だ。
言い訳をすると余計にみっともないとも思ったんだけど、それでも言葉を尽くさずにはいられなくて。
ずっと無言のままの西沢さんに、僕は必死の謝罪と言い訳を重ねてなんとか機嫌を直してもらおうとしてたんだけど――、
「佐々木くんすごいっ!」
突然、西沢さんが両手の平を胸の前でポンと合わせて興奮したように言った。
「え? な、なにが?」
ずっと黙り込んでいた西沢さんが突然何を言い出したのか理解できなかった僕は、必死に言葉の意味を考える。
(もしかして彼女をほったらかしてゲームに熱中するなんてすごいね、っていう皮肉なんだろうか?)
心優しい西沢さんですら、そんな皮肉も言いたくなるほどの酷い放置プレイを、僕はやらかしてしまったんだ――、
「最後、大ピンチだったのに大逆転だったよね!」
だけど西沢さんの口から出たのは、思いもよらない言葉だった。
「え? ああうん。そうだったんだけど、そんなことより――」
「わたし最後はもう、ああ負けちゃうって、ハラハラしながら見てたんだから。でも勝ってくれて嬉しかったぁ。応援してた甲斐があったよ」
さっきの勝利を、まるで自分のことのように嬉しそうに喜んでくれる西沢さん。
「ありがとう西沢さん。でも熱中しすぎてごめんね、次からは気を付けるから」
というかもうゲーセンには来ないから。
来てもプリクラだけして帰るから。
「気を付ける? なんで? 集中する佐々木くんの横顔、すごくカッコよかったよ? 惚れなおしちゃったし――なんちゃって、このこのぉっ!」
「そ、そう? だったらいいんだけど」
「もう、せっかく勝ったのに変な佐々木くん――って、ゲームを放置してていいの? 負けちゃうよ?」
言いながら、西沢さんは棒立ちのままCPUに1本目をパーフェクトゲームされた画面を指差した。
「そうだね、うん、じゃあ続きをやろうかな」
僕は西沢さんがちっとも怒ってないことに胸をなでおろすと、CPU戦を再開する。
幸運にも西沢さんは、放っておかれたとは思わずにいてくれたみたいだった。
でも僕は今回はラッキーだったと思うことにする。
こんなのはそう何度もあることじゃない。
だからこれからはちゃんとお互いが楽しめるようなデートをするんだと、改めて心に誓ったのだった。
西沢さんの優しさにいいように甘えるだけの、そんなダサい男のままではいたくなかったから。