「えっと、なにが?」
だけどその短い質問の意味がイマイチわからなくて、僕は聞き返してしまう。
「もう、女の子と会ったらまず最初に服を褒めるのが男子の義務だと思うんだよね。しかもわたしってば佐々木くんの彼女なわけなんです。つまり導き出される答えは?」
指を立てながらわざとらしくほっぺを膨らませる西沢さん。
「あ、うん、そういうことか。えっと……制服じゃない西沢さんは初めて見たからすごく新鮮で……す、すごく可愛いと思う。まるでアイドルみたい。太いヒールのブーツもおしゃれで大人っぽくて、すごくドキドキする」
西沢さんと話していると自然と褒める言葉が出てくることもあるんだけれど。
改めて言ってみてと言われると、やっぱりどこか緊張してしまう僕がいた。
それでもなんとかちゃんと言葉にして感想を伝える。
西沢さんみたいな可愛い女の子にこんなに好いてもらってるんだから、僕も恥ずかしがってないで気持ちをちゃんと言葉にして伝えないといけないって思うから。
「えへへ、ありがとう佐々木くん。嬉しいな」
そして僕に褒められただけで、西沢さんは満開の桜のような笑みを浮かべた。
こんな風に喜んでもらえたんだから、頑張って言って良かったかな。
「それで、西沢さんは今日はどうしたの? 買い物?」
「特にこれってのはなくて、明日のデートに備えて適当にぶらぶら見て回ろうかなって思ったの。佐々木くんは?」
「僕もその、明日に備えてちょっと買い物を……」
デートに来ていく服がないので買いに来た――という理由があまりに情けなさすぎて、僕はつい言葉を濁してしまった。
しかも友達付き合いが少なすぎて遊びに行くこともないから、服を買いに行くための服すらないときたもんだ。
「あ、だったらもう今からデートしちゃわない? 明日まで待つ必要ないと思うんだよね。佐々木くんと色々見て回ってお買い物デートしたいな」
だけど西沢さんは、胸の前で手を合わせながら名案とばかりにそんな風に言ってくるのだ。
「うんと、それはそうかもなんだけど、その、なんていうか……」
「あ、ごめんなさい。もしかして誰かと待ち合わせしてたり? 強引に誘っちゃって、あの、嫌いにならないでね? 佐々木くんと会えてちょっとテンションが上がっちゃって」
西沢さんは笑顔が一転、とても申し訳なさそうな顔をした。
しかもそれだけでなく、しょんぼりと肩を落としているようにも見えて――。
ふと、先ほど理容師のおにーさんから言われた『そこからあとは男は中身で勝負だよ、頑張ってね』という言葉が僕の脳裏をよぎった。
明日のデートで自分が見栄を張って着飾るために、今ここにいる西沢さんに悲しい思いをさせてしまう。
それが男として正しい行動なんだろうか?
心の中で僕はそう自問自答した。
いやそんなことをするまでもなかった。
自分の都合で女の子を泣かせるヤツが、いい男なわけなんてない!
「実はその、恥ずかしい話なんだけど――」
僕は西沢さんに、今日何をしにここに来たのかを正直に告白した。
明日のデートで来ていく服がないから買いに来たってことも。
日曜日に伸ばしてもらったのもそれを取り繕うためだったってことも。
しかも理容師さんに服に関するアドバイスをもらって、教えてもらったお店に行こうとしてたってことも。
僕は西沢さんに正直に伝えたんだ。
すごくダサくて、どうしようもなくカッコ悪くて、泣きたいくらいにイケてなくて。
それでも目の前にいる西沢さんを悲しませることよりは、絶対にいいと思ったから。
すると、
「じゃあやっぱり今日は佐々木くんも予定が空いてるってことなんだよね? だったら一緒にまず服を見て回らないかな?」
西沢さんはおずおずとそんな風に切り出してきたんだ。
だけどその短い質問の意味がイマイチわからなくて、僕は聞き返してしまう。
「もう、女の子と会ったらまず最初に服を褒めるのが男子の義務だと思うんだよね。しかもわたしってば佐々木くんの彼女なわけなんです。つまり導き出される答えは?」
指を立てながらわざとらしくほっぺを膨らませる西沢さん。
「あ、うん、そういうことか。えっと……制服じゃない西沢さんは初めて見たからすごく新鮮で……す、すごく可愛いと思う。まるでアイドルみたい。太いヒールのブーツもおしゃれで大人っぽくて、すごくドキドキする」
西沢さんと話していると自然と褒める言葉が出てくることもあるんだけれど。
改めて言ってみてと言われると、やっぱりどこか緊張してしまう僕がいた。
それでもなんとかちゃんと言葉にして感想を伝える。
西沢さんみたいな可愛い女の子にこんなに好いてもらってるんだから、僕も恥ずかしがってないで気持ちをちゃんと言葉にして伝えないといけないって思うから。
「えへへ、ありがとう佐々木くん。嬉しいな」
そして僕に褒められただけで、西沢さんは満開の桜のような笑みを浮かべた。
こんな風に喜んでもらえたんだから、頑張って言って良かったかな。
「それで、西沢さんは今日はどうしたの? 買い物?」
「特にこれってのはなくて、明日のデートに備えて適当にぶらぶら見て回ろうかなって思ったの。佐々木くんは?」
「僕もその、明日に備えてちょっと買い物を……」
デートに来ていく服がないので買いに来た――という理由があまりに情けなさすぎて、僕はつい言葉を濁してしまった。
しかも友達付き合いが少なすぎて遊びに行くこともないから、服を買いに行くための服すらないときたもんだ。
「あ、だったらもう今からデートしちゃわない? 明日まで待つ必要ないと思うんだよね。佐々木くんと色々見て回ってお買い物デートしたいな」
だけど西沢さんは、胸の前で手を合わせながら名案とばかりにそんな風に言ってくるのだ。
「うんと、それはそうかもなんだけど、その、なんていうか……」
「あ、ごめんなさい。もしかして誰かと待ち合わせしてたり? 強引に誘っちゃって、あの、嫌いにならないでね? 佐々木くんと会えてちょっとテンションが上がっちゃって」
西沢さんは笑顔が一転、とても申し訳なさそうな顔をした。
しかもそれだけでなく、しょんぼりと肩を落としているようにも見えて――。
ふと、先ほど理容師のおにーさんから言われた『そこからあとは男は中身で勝負だよ、頑張ってね』という言葉が僕の脳裏をよぎった。
明日のデートで自分が見栄を張って着飾るために、今ここにいる西沢さんに悲しい思いをさせてしまう。
それが男として正しい行動なんだろうか?
心の中で僕はそう自問自答した。
いやそんなことをするまでもなかった。
自分の都合で女の子を泣かせるヤツが、いい男なわけなんてない!
「実はその、恥ずかしい話なんだけど――」
僕は西沢さんに、今日何をしにここに来たのかを正直に告白した。
明日のデートで来ていく服がないから買いに来たってことも。
日曜日に伸ばしてもらったのもそれを取り繕うためだったってことも。
しかも理容師さんに服に関するアドバイスをもらって、教えてもらったお店に行こうとしてたってことも。
僕は西沢さんに正直に伝えたんだ。
すごくダサくて、どうしようもなくカッコ悪くて、泣きたいくらいにイケてなくて。
それでも目の前にいる西沢さんを悲しませることよりは、絶対にいいと思ったから。
すると、
「じゃあやっぱり今日は佐々木くんも予定が空いてるってことなんだよね? だったら一緒にまず服を見て回らないかな?」
西沢さんはおずおずとそんな風に切り出してきたんだ。