西沢さんとは朝から休み時間のたびに話をして。
そうして迎えたカップルとなって初めてのお昼休み。
「佐々木くんってお昼はいつもパンか学食だよね? お弁当作ってきたんだ。一緒に食べようよ」
僕の席までやってきた西沢さんは、女の子が食べるには明らかに大きすぎるお弁当袋を見せてきた。
過去に何度かチラ見していた西沢さんのお弁当は、「本当にそれで足りるの?」って思うくらいに小さなお弁当だったんだけど、今日は違う。
明らかに2人分以上の量がそこにはあった。
「えっ、お弁当を作ってきてくれたの? 僕のために?」
「昨日ほら、好きな食べ物と嫌いな食べ物を聞いたでしょ?」
「そう言えば聞かれたね。もしかしなくてもお弁当のためだったんだね! ありがとう」
「えへへ、そうだったんだ」
ふんわり柔らかくはにかむ西沢さん。
昨日の帰り道で好きな食べ物を聞かれたときに、好きな食べ物で相性占いでもするのかなとか思った恋愛感性ゼロの自分が恥ずかしい……。
「あ、早起きしたって言ってたけどもしかして――」
「男の子にお弁当を作るのは初めてだったので、それなりに気合を入れましたから」
あ、西沢さんがちょっと得意げな顔をしてる。
ふふん、って感じだ。
そんな顔もまたすごく魅力的で可愛くて、お弁当を作ってきてくれたことも相まって、僕はもう心が幸せの2文字で溢れてしまいそうだった。
「でも2人分なんて大変だったでしょ?」
「量が増えるだけだから実はそうでもなかったんだけどね。どちらかって言うと、味付けを失敗しないように微調整するのに時間がかかった感じかなぁ」
「やっぱり時間かかってるよね。ありがとう、本当に嬉しいよ」
「わたしも佐々木くんが喜んでくれて嬉しいな。頑張って早起きした甲斐がありました!」
早起きしてお弁当を作ってくれた西沢さんへの感謝の気持ちを伝えていると、ここで僕はクラスメイトのほとんど全員の視線が、僕と西沢さんに向けられていることに気が付いた。
そりゃあそうなるよね!
学園のアイドルと呼ばれ知らない生徒はいない西沢彩菜が、スクールカースト底辺の冴えない男子と朝から仲良さそうに話しているだけでなく。
なんとお弁当まで作ってきて一緒に食べようと言ったのだから。
スクールカースト1軍をも凌駕する学園のアイドル西沢さんの反感を買いたくないからか、さすがにもう僕をあれこれいう声は聞こえてはこなかったけど。
代わりにスマホをいじってる人が結構いて、見えないところでさっきのようなやり取りしているんだろうなと、なんとなく感じていた。
「えっと、今日は天気もいいし、中庭にでも行かない?」
そんな微妙な空気だったので、このまま教室で一緒に西沢さんの手作り弁当を食べるのは恥ずかしすぎて精神が持たなさそうで、だから僕はやや小声で場所の移動を提案する。
それでやっと西沢さんも、僕たち2人が周囲の視線を集めていることに気が付いたのか、
「はうっ、みんな見てる……い、行こっ?」
一瞬で顔を真っ赤にすると、僕の手を取って教室を出ていこうとする。
手を繋いだことでよりいっそう周囲の視線を集めてしまってるんだけど、今の西沢さんはそこまでは思い至らないみたいだった。
西沢さんの女の子らしい柔らかい手に引かれながら、僕たちは中庭へと向かう。
廊下でも道行く生徒たちから好奇の視線を散々に向けられた僕たちは、衆人環視の昼休みの校内を潜り抜けて、ようやっと穏やかな陽光が差し込む中庭へとたどり着いた。
そうして迎えたカップルとなって初めてのお昼休み。
「佐々木くんってお昼はいつもパンか学食だよね? お弁当作ってきたんだ。一緒に食べようよ」
僕の席までやってきた西沢さんは、女の子が食べるには明らかに大きすぎるお弁当袋を見せてきた。
過去に何度かチラ見していた西沢さんのお弁当は、「本当にそれで足りるの?」って思うくらいに小さなお弁当だったんだけど、今日は違う。
明らかに2人分以上の量がそこにはあった。
「えっ、お弁当を作ってきてくれたの? 僕のために?」
「昨日ほら、好きな食べ物と嫌いな食べ物を聞いたでしょ?」
「そう言えば聞かれたね。もしかしなくてもお弁当のためだったんだね! ありがとう」
「えへへ、そうだったんだ」
ふんわり柔らかくはにかむ西沢さん。
昨日の帰り道で好きな食べ物を聞かれたときに、好きな食べ物で相性占いでもするのかなとか思った恋愛感性ゼロの自分が恥ずかしい……。
「あ、早起きしたって言ってたけどもしかして――」
「男の子にお弁当を作るのは初めてだったので、それなりに気合を入れましたから」
あ、西沢さんがちょっと得意げな顔をしてる。
ふふん、って感じだ。
そんな顔もまたすごく魅力的で可愛くて、お弁当を作ってきてくれたことも相まって、僕はもう心が幸せの2文字で溢れてしまいそうだった。
「でも2人分なんて大変だったでしょ?」
「量が増えるだけだから実はそうでもなかったんだけどね。どちらかって言うと、味付けを失敗しないように微調整するのに時間がかかった感じかなぁ」
「やっぱり時間かかってるよね。ありがとう、本当に嬉しいよ」
「わたしも佐々木くんが喜んでくれて嬉しいな。頑張って早起きした甲斐がありました!」
早起きしてお弁当を作ってくれた西沢さんへの感謝の気持ちを伝えていると、ここで僕はクラスメイトのほとんど全員の視線が、僕と西沢さんに向けられていることに気が付いた。
そりゃあそうなるよね!
学園のアイドルと呼ばれ知らない生徒はいない西沢彩菜が、スクールカースト底辺の冴えない男子と朝から仲良さそうに話しているだけでなく。
なんとお弁当まで作ってきて一緒に食べようと言ったのだから。
スクールカースト1軍をも凌駕する学園のアイドル西沢さんの反感を買いたくないからか、さすがにもう僕をあれこれいう声は聞こえてはこなかったけど。
代わりにスマホをいじってる人が結構いて、見えないところでさっきのようなやり取りしているんだろうなと、なんとなく感じていた。
「えっと、今日は天気もいいし、中庭にでも行かない?」
そんな微妙な空気だったので、このまま教室で一緒に西沢さんの手作り弁当を食べるのは恥ずかしすぎて精神が持たなさそうで、だから僕はやや小声で場所の移動を提案する。
それでやっと西沢さんも、僕たち2人が周囲の視線を集めていることに気が付いたのか、
「はうっ、みんな見てる……い、行こっ?」
一瞬で顔を真っ赤にすると、僕の手を取って教室を出ていこうとする。
手を繋いだことでよりいっそう周囲の視線を集めてしまってるんだけど、今の西沢さんはそこまでは思い至らないみたいだった。
西沢さんの女の子らしい柔らかい手に引かれながら、僕たちは中庭へと向かう。
廊下でも道行く生徒たちから好奇の視線を散々に向けられた僕たちは、衆人環視の昼休みの校内を潜り抜けて、ようやっと穏やかな陽光が差し込む中庭へとたどり着いた。