翌朝。
いつものギリ電ではなく1本早いフツ電に乗るべく、いつもより15分早く目覚ましをセットした僕は。
目覚ましが鳴った瞬間に飛び起きると、まず最初に昨日のことが夢じゃなかったかどうかを自問した。
「冴えない底辺カースト男子が、学園のアイドルに呼び出されて屋上で告白をされる──妄想をこじらせたにしても痛々しすぎる」
一晩たって改めて考えてみると、とても現実のこととは思えなかった。
もしかしたら昨日の僕はすごくリアルな白昼夢か、やばい幻覚でも見ていたのかもしれない。
いやそもそも今この瞬間までの一連のなにもかも全てが、寝ている間に見ていた夢だったのかもしれなかった。
もしこんな話をアニメで見たら「こんなのあるわけないじゃん(素)」と寒々しく突っ込みつつも、最終回まで主人公に自分を重ねてガッツリ視聴する、ってくらいにありえなかった。
「あっとそうだ、スマホ。西沢さんと連絡先を交換してたはず」
僕は机のすみで充電していたスマホを急いで取るとラインを立ち上げた。
するとそこには白黒猫のちび太のアイコンと『彩菜』という名前があって――。
「ちゃんとある……友だちリストに西沢さんが登録されてる……ってことは、僕は本当に西沢さんに告白されたんだ」
昨日の放課後のあれこれを噛みしめるように追憶しながら、僕はだらしなく顔をにやけさせてしまった。
だって仕方ないでしょ?
今どきアニメでもなさそうな望外の幸運が、他の誰でもない僕の身に降りかかったんだから。
「西沢さんの手、柔らかかったな……」
手をわきわき動かすとまだ握った感触が残っている気がする。
「って、だめだ。ゆっくりしてたら早起きした意味がなくなっちゃう」
僕はすぐに朝の準備に取り掛かった。
寝癖がないかを入念にチェックしながら、いつもよりも丁寧に前髪をセットして。
さらに玄関にある姿見でいつもはしない制服チェックまでしっかり行ってから。
僕は普段より15分早く家を出ると、フツ電に乗って高校へと向かった。
いつもとは顔ぶれが異なる乗客たちと一緒に3駅揺られて高校の最寄り駅に着き、登校する生徒の流れに乗って校舎へ。
さらに上履きに履き替えて教室へと向かつた。
「おはよ~」
教室に入る時に、僕はいつもよりも少しだけ大きな声であいさつをした。
ほんとはもっと大きな声で明るくあいさつをしたかった。
ぼそぼそ言うのははやめる、変わるんだって思って勇気を出そうとしたんだけど、気持ちとは裏腹に僕は勇気を出し切ることができなかった。
(でも少しずつでいいから、まずは頑張ることを頑張るんだ)
だって今までの僕は頑張ることすらしてこなかったから。
そんな僕に、おしゃべり中の西沢さんが視線を向けてくる。
「佐々木くんおはよう~」
そして飛び切りの笑顔で言うと、席にカバンを置いた僕のところへとてけてけと近寄ってきたのだ。
いつもおしゃべりしているグループの女子たちはそんな西沢さんの態度に特に驚いた様子もなく、
「彩菜がんばれー」
「ファイトー」
とか言って手を振っている。
仲良しグループには事前に西沢さんから話が通っているみたいだね。
だけどそれ以外のクラス全員が、西沢さんの突然の行動に大いにざわつき始めた。
一瞬にしてクラス中の視線が僕と西沢さんに全集中する。
「おはよう西沢さん」
そんな衆人環視の中で、僕はもう一度挨拶を――だけど今度は西沢さんだけに向かって挨拶をした。
みんなに見られて緊張しないと言ったら嘘になる。
でも僕は変わるって決めたから――。
「えへへ、昨日ぶりだね。夜にラインして、その後はすぐに寝ちゃったからまだ昨日の続きみたいな気がするかも」
西沢さんが嬉しそうに手の平を軽くポンと合わせた。
ごめん、心の中だけでぶっちゃけさせて。
(向けられる笑顔とか仕草が可愛すぎて、僕もう死にそうなんですけどーーっ!!)
いつものギリ電ではなく1本早いフツ電に乗るべく、いつもより15分早く目覚ましをセットした僕は。
目覚ましが鳴った瞬間に飛び起きると、まず最初に昨日のことが夢じゃなかったかどうかを自問した。
「冴えない底辺カースト男子が、学園のアイドルに呼び出されて屋上で告白をされる──妄想をこじらせたにしても痛々しすぎる」
一晩たって改めて考えてみると、とても現実のこととは思えなかった。
もしかしたら昨日の僕はすごくリアルな白昼夢か、やばい幻覚でも見ていたのかもしれない。
いやそもそも今この瞬間までの一連のなにもかも全てが、寝ている間に見ていた夢だったのかもしれなかった。
もしこんな話をアニメで見たら「こんなのあるわけないじゃん(素)」と寒々しく突っ込みつつも、最終回まで主人公に自分を重ねてガッツリ視聴する、ってくらいにありえなかった。
「あっとそうだ、スマホ。西沢さんと連絡先を交換してたはず」
僕は机のすみで充電していたスマホを急いで取るとラインを立ち上げた。
するとそこには白黒猫のちび太のアイコンと『彩菜』という名前があって――。
「ちゃんとある……友だちリストに西沢さんが登録されてる……ってことは、僕は本当に西沢さんに告白されたんだ」
昨日の放課後のあれこれを噛みしめるように追憶しながら、僕はだらしなく顔をにやけさせてしまった。
だって仕方ないでしょ?
今どきアニメでもなさそうな望外の幸運が、他の誰でもない僕の身に降りかかったんだから。
「西沢さんの手、柔らかかったな……」
手をわきわき動かすとまだ握った感触が残っている気がする。
「って、だめだ。ゆっくりしてたら早起きした意味がなくなっちゃう」
僕はすぐに朝の準備に取り掛かった。
寝癖がないかを入念にチェックしながら、いつもよりも丁寧に前髪をセットして。
さらに玄関にある姿見でいつもはしない制服チェックまでしっかり行ってから。
僕は普段より15分早く家を出ると、フツ電に乗って高校へと向かった。
いつもとは顔ぶれが異なる乗客たちと一緒に3駅揺られて高校の最寄り駅に着き、登校する生徒の流れに乗って校舎へ。
さらに上履きに履き替えて教室へと向かつた。
「おはよ~」
教室に入る時に、僕はいつもよりも少しだけ大きな声であいさつをした。
ほんとはもっと大きな声で明るくあいさつをしたかった。
ぼそぼそ言うのははやめる、変わるんだって思って勇気を出そうとしたんだけど、気持ちとは裏腹に僕は勇気を出し切ることができなかった。
(でも少しずつでいいから、まずは頑張ることを頑張るんだ)
だって今までの僕は頑張ることすらしてこなかったから。
そんな僕に、おしゃべり中の西沢さんが視線を向けてくる。
「佐々木くんおはよう~」
そして飛び切りの笑顔で言うと、席にカバンを置いた僕のところへとてけてけと近寄ってきたのだ。
いつもおしゃべりしているグループの女子たちはそんな西沢さんの態度に特に驚いた様子もなく、
「彩菜がんばれー」
「ファイトー」
とか言って手を振っている。
仲良しグループには事前に西沢さんから話が通っているみたいだね。
だけどそれ以外のクラス全員が、西沢さんの突然の行動に大いにざわつき始めた。
一瞬にしてクラス中の視線が僕と西沢さんに全集中する。
「おはよう西沢さん」
そんな衆人環視の中で、僕はもう一度挨拶を――だけど今度は西沢さんだけに向かって挨拶をした。
みんなに見られて緊張しないと言ったら嘘になる。
でも僕は変わるって決めたから――。
「えへへ、昨日ぶりだね。夜にラインして、その後はすぐに寝ちゃったからまだ昨日の続きみたいな気がするかも」
西沢さんが嬉しそうに手の平を軽くポンと合わせた。
ごめん、心の中だけでぶっちゃけさせて。
(向けられる笑顔とか仕草が可愛すぎて、僕もう死にそうなんですけどーーっ!!)