「佐々木くん、今日は放課後付き合ってくれてありがとうございました。それと不束者ですが、これからよろしくお願いします」
「あ、えっと、こちらこそよろしくお願いします」
僕たちはなんだかちょっと変な感じに、ぺこりぺこりと頭を下げあった。
そして、
「良かったら、その、家まで……お、送ろうか?」
僕は勇気を振り絞って言ってみた。
女の子を家まで送るのはやっぱり彼氏の務めじゃないかなって思ったから。
「気持ちは嬉しいけど、うちってここから結構遠いんだよね。もう暗くなってきてるし、行ってまた戻ってきたらかなり遅くなっちゃうから。だから気持ちだけ受け取っておくね。ありがとう佐々木くん」
「ううん、全然。言ってみただけだから気にしないで」
勇気を出したのに断られてしまい、正直ちょっとだけ残念だった。
でも実を言うと、僕も晩ご飯までには家に帰らないといけなかったりする。
高校生になって自由度が格段に上がったとはいえ、まだまだ子供だ。
両親を心配させないためにもあまり夜遅くまでは遊び歩けなかった。
「あ、そうだ。後でラインしてもいいかな? 宿題終わってからだから10時過ぎくらいになるかもなんだけど」
だから西沢さんの提案を聞いて僕はとても嬉しくなった。
だって家に帰ってからも西沢さんと繋がっていられるのだから。
「もちろんだよ。じゃあ僕もそれまでに宿題終わらせて連絡待ってるね」
「うん! それじゃあ佐々木くん、また明日学校でね、ばいばい」
「ばいばい西沢さん」
すっかり日が暮れてしまい、太陽に代わって人工の光で彩られた駅前で。
ぼくたちは小さく手を振り合ってから別れた。
さっきまでの素敵すぎる時間に名残惜しさを感じて、改札を抜ける時に振り返ってみると、同じように振り返ってこっちを見ている西沢さんと目が合って。
だから僕たちはもう一度手を振り合ったのだった。
差出人不明の手紙から始まった放課後の一大イベントは、こうして幕を閉じたのだった。
帰宅後、思い立ったが吉日で早速僕は筋トレに挑戦してみた。
といっても、帰宅部歴が長い僕の筋力は高校生男子の平均を大きく下回る。
そのため腕立て・腹筋・背筋・スクワットを20回ずつなんとかこなしただけだった。
しかもたったそれだけで、
「ぜぇ、ぜぇ……はぁ、はぁ……」
僕の貧弱な身体はへとへとになってしまっていた。
それでも、僕のためにダイエットを頑張るのだと言ってくれた西沢の素敵な笑顔を思い出すと、ものすごくやる気が湧いてきて。
筋トレに限らずどんなことでも少しでもいいからやれることをやって、西沢さんに相応しい男になれたらなと僕は思ったのだった。
その後、ご飯を食べてお風呂に入って宿題を終えて。
夜10時をちょっと過ぎたころにブーンとスマホが震えた。
約束通り西沢さんからのラインだ。
彩菜
『こんばんは』
『今日はありがとう』
『もう宿題終わってる?』
❓
『終わったけど』
『数学がちょっと難しかった』
彩菜
『わかる~』
『高校の数学って難しいよね』
『難易度が急上昇』
『だよね』
彩菜
『でも勉強の話はやめたいかも』
『楽しい話しよ!』
『ごめん(笑)』
彩菜
『ねぇねぇ』
『佐々木くんって』
『なに?』
彩菜
『いつも予鈴ギリギリだよね』
『明日もいつも通りに来るの?』
『なんで?』
彩菜
『朝佐々木くんとお話したいなって』
💖
『じゃあ明日からは』
『フツ電で行くよ』
彩菜
『仏伝って?』
『フツ電って?』
『教室に予鈴ギリギリにつくのがギリ電で』
『1本前の普通の時間につくのがフツ電』
彩菜
『そんな風に言うんだ!』
『知らなかった』
『わたし徒歩通学だから』
👟
『そっか』
『電車乗らないと知らないよね』
『だから明日は』
『予鈴15分前につくはず』
彩菜
『りょ!』
『待ってるね!』
『遅刻厳禁!』
😆
スマホを使って西沢さんとメッセージをやり取りする。
スマホの中での文字やスタンプだけのやり取りは、視線を合わせて面と向かって話すのと違って、かなりスムーズにできたんじゃないかと思う。
もちろん相手が西沢さんだってのはどうしても意識しちゃうから、あくまで比較の話ではあるんだけれど。
なにせ僕ときたら今日の今日まで、女の子とろくに話したことすらなかったぼっち底辺男子だったのだ。
「でも明日からは彼氏彼女として西沢さんと会うわけだよね。西沢さんが僕なんか――僕と付き合ってるってわかったらみんな驚くよね。ううっ、そう考えると今から緊張してきた……」
僕たちは間違いなく注目の的になる。
まだ明日にもなっていないというのに考えるだけでプレッシャーを感じてしまい、僕は思わず胃の辺りを抑えてしまった。
「いやでも。学校内ではそこまではカップルっぽい振る舞いはしないかな?
西沢さんっていつも女子グループで静かに話をしてるしね」
だから少し話すくらいで、そこまで彼氏彼女をアピールはしないんじゃないかな。
――などと思っていた時期が僕にもありました。
「あ、えっと、こちらこそよろしくお願いします」
僕たちはなんだかちょっと変な感じに、ぺこりぺこりと頭を下げあった。
そして、
「良かったら、その、家まで……お、送ろうか?」
僕は勇気を振り絞って言ってみた。
女の子を家まで送るのはやっぱり彼氏の務めじゃないかなって思ったから。
「気持ちは嬉しいけど、うちってここから結構遠いんだよね。もう暗くなってきてるし、行ってまた戻ってきたらかなり遅くなっちゃうから。だから気持ちだけ受け取っておくね。ありがとう佐々木くん」
「ううん、全然。言ってみただけだから気にしないで」
勇気を出したのに断られてしまい、正直ちょっとだけ残念だった。
でも実を言うと、僕も晩ご飯までには家に帰らないといけなかったりする。
高校生になって自由度が格段に上がったとはいえ、まだまだ子供だ。
両親を心配させないためにもあまり夜遅くまでは遊び歩けなかった。
「あ、そうだ。後でラインしてもいいかな? 宿題終わってからだから10時過ぎくらいになるかもなんだけど」
だから西沢さんの提案を聞いて僕はとても嬉しくなった。
だって家に帰ってからも西沢さんと繋がっていられるのだから。
「もちろんだよ。じゃあ僕もそれまでに宿題終わらせて連絡待ってるね」
「うん! それじゃあ佐々木くん、また明日学校でね、ばいばい」
「ばいばい西沢さん」
すっかり日が暮れてしまい、太陽に代わって人工の光で彩られた駅前で。
ぼくたちは小さく手を振り合ってから別れた。
さっきまでの素敵すぎる時間に名残惜しさを感じて、改札を抜ける時に振り返ってみると、同じように振り返ってこっちを見ている西沢さんと目が合って。
だから僕たちはもう一度手を振り合ったのだった。
差出人不明の手紙から始まった放課後の一大イベントは、こうして幕を閉じたのだった。
帰宅後、思い立ったが吉日で早速僕は筋トレに挑戦してみた。
といっても、帰宅部歴が長い僕の筋力は高校生男子の平均を大きく下回る。
そのため腕立て・腹筋・背筋・スクワットを20回ずつなんとかこなしただけだった。
しかもたったそれだけで、
「ぜぇ、ぜぇ……はぁ、はぁ……」
僕の貧弱な身体はへとへとになってしまっていた。
それでも、僕のためにダイエットを頑張るのだと言ってくれた西沢の素敵な笑顔を思い出すと、ものすごくやる気が湧いてきて。
筋トレに限らずどんなことでも少しでもいいからやれることをやって、西沢さんに相応しい男になれたらなと僕は思ったのだった。
その後、ご飯を食べてお風呂に入って宿題を終えて。
夜10時をちょっと過ぎたころにブーンとスマホが震えた。
約束通り西沢さんからのラインだ。
彩菜
『こんばんは』
『今日はありがとう』
『もう宿題終わってる?』
❓
『終わったけど』
『数学がちょっと難しかった』
彩菜
『わかる~』
『高校の数学って難しいよね』
『難易度が急上昇』
『だよね』
彩菜
『でも勉強の話はやめたいかも』
『楽しい話しよ!』
『ごめん(笑)』
彩菜
『ねぇねぇ』
『佐々木くんって』
『なに?』
彩菜
『いつも予鈴ギリギリだよね』
『明日もいつも通りに来るの?』
『なんで?』
彩菜
『朝佐々木くんとお話したいなって』
💖
『じゃあ明日からは』
『フツ電で行くよ』
彩菜
『仏伝って?』
『フツ電って?』
『教室に予鈴ギリギリにつくのがギリ電で』
『1本前の普通の時間につくのがフツ電』
彩菜
『そんな風に言うんだ!』
『知らなかった』
『わたし徒歩通学だから』
👟
『そっか』
『電車乗らないと知らないよね』
『だから明日は』
『予鈴15分前につくはず』
彩菜
『りょ!』
『待ってるね!』
『遅刻厳禁!』
😆
スマホを使って西沢さんとメッセージをやり取りする。
スマホの中での文字やスタンプだけのやり取りは、視線を合わせて面と向かって話すのと違って、かなりスムーズにできたんじゃないかと思う。
もちろん相手が西沢さんだってのはどうしても意識しちゃうから、あくまで比較の話ではあるんだけれど。
なにせ僕ときたら今日の今日まで、女の子とろくに話したことすらなかったぼっち底辺男子だったのだ。
「でも明日からは彼氏彼女として西沢さんと会うわけだよね。西沢さんが僕なんか――僕と付き合ってるってわかったらみんな驚くよね。ううっ、そう考えると今から緊張してきた……」
僕たちは間違いなく注目の的になる。
まだ明日にもなっていないというのに考えるだけでプレッシャーを感じてしまい、僕は思わず胃の辺りを抑えてしまった。
「いやでも。学校内ではそこまではカップルっぽい振る舞いはしないかな?
西沢さんっていつも女子グループで静かに話をしてるしね」
だから少し話すくらいで、そこまで彼氏彼女をアピールはしないんじゃないかな。
――などと思っていた時期が僕にもありました。