「じゃあいい時間だし、そろそろ帰ろっか」
僕がそう提案すると、
「屋上にいるとちょっと風が肌寒くなってきたもんね。でもその前に佐々木くんの連絡先を教えてくれないかな? ラインやってる?」
西沢さんがスカートのポケットからスマホを取り出しながら聞いてくる。
あまり派手派手デコっていない落ち着いたピンクのスマホケースが、すごく西沢さんらしい。
「一応やってるよ」
「一応? なに、一応って? ラインに一応とかってあるの?」
「一応はその、一応で……」
西沢さんにとっては何気ないその質問に──だけどボクにとってはとても重い質問だ――ボクは思わず言葉を詰まらせてしまう。
すると西沢さんはポンと手を叩いてから言った。
「あ、わかった! 有料スタンプは取らないとかそういう感じでしょ?」
「えっと、そういうんじゃなくて……」
「あれ、違った? うーん、じゃあなんだろ?」
首をかしげる西沢さん。
「一応やってはいるけどほとんど使ってないんだ」
「ふむふむ、佐々木くんはラインしない派なんだね。ってことは、あんまり頻繁には連絡とかはしない方がよかったりする?」
「しない派っていうかその……」
西沢さんの言葉に、僕はなんともあいまいに言葉を濁す。
「そういうわたしも言うほど頻繁じゃないんだけどね。ごはんの時は使うの禁止だし、成績が落ちたらスマホ取り上げって言われてるから、ちゃんと勉強はしないとだから」
「あ、その辺は僕も一緒かな。赤点をとったら次のテストまでスマホ禁止って言われてるんだ」
学園のアイドルも陰キャ男子も、どこの家も子供のスマホ事情は似たり寄ったりみたいだね。
「でもでもやっぱり、連絡しすぎて佐々木くんにウザいって思われたくないから。できればあらかじめ佐々木くんのスタイルを聞いておきたいかなって思うんだけど」
どうも西沢さんにとってこの件は、お付き合いする上でとても重要なことみたいだね。
そもそもの大前提として、僕が西沢さんから連絡をもらってウザいと思うことは皆無だと思うんだけどなぁ。
むしろ頻繁に連絡してもらえたら、それだけで好意を実感できて嬉しくなるはずだ。
でも西沢さんにとってはとても大事なことみたいだし、仕方ない。ここは素直に白状しよう。
「連絡する相手がいないから、あまり使うことがなかったんだよ」
僕はラインの「友だちリスト」を開くと、すっからかんのリストを西沢さんに見せてあげた。
「シバターってのは多分これは同じクラスの柴田君だよね? 教室でもよく2人で話してるもんね。それとこれはご両親? でも気のせいかな? これ3人しか連絡先なくない? クラスのライングループも入ってないみたいだけど」
覗き込んだ西沢さんが確認するように僕を見た。
まるで宇宙人でも見たかのような不思議そうな顔をしている。
「ライングループには入ってないんだ。こういうわけだから、ラインを使う機会はほとんどなかったんだ。『一応』って言ったのはそういうこと」
毎朝予鈴ギリギリに登校し、放課後もすぐに学校を出てまっすぐ家に帰る僕に、家族から連絡があることはほぼほぼない。
そして柴田君とは家に帰ってまで頻繁にやり取りするほどの大親友というわけでもない。
ちなみに柴田君は休みの日とかはずっと家にこもってWeb小説の執筆をしているらしい。
ガンガン書いて上手くなってプロの作家になるんだって堂々と言っている。
同い年なのにもう将来の夢を持っていて、それに向かって努力しているのは本当に凄いと思う。
(学校カーストでは同じように友達がいない陰キャ扱いでも、柴田君の本質は決して陰キャじゃないんだよな)
僕がそう提案すると、
「屋上にいるとちょっと風が肌寒くなってきたもんね。でもその前に佐々木くんの連絡先を教えてくれないかな? ラインやってる?」
西沢さんがスカートのポケットからスマホを取り出しながら聞いてくる。
あまり派手派手デコっていない落ち着いたピンクのスマホケースが、すごく西沢さんらしい。
「一応やってるよ」
「一応? なに、一応って? ラインに一応とかってあるの?」
「一応はその、一応で……」
西沢さんにとっては何気ないその質問に──だけどボクにとってはとても重い質問だ――ボクは思わず言葉を詰まらせてしまう。
すると西沢さんはポンと手を叩いてから言った。
「あ、わかった! 有料スタンプは取らないとかそういう感じでしょ?」
「えっと、そういうんじゃなくて……」
「あれ、違った? うーん、じゃあなんだろ?」
首をかしげる西沢さん。
「一応やってはいるけどほとんど使ってないんだ」
「ふむふむ、佐々木くんはラインしない派なんだね。ってことは、あんまり頻繁には連絡とかはしない方がよかったりする?」
「しない派っていうかその……」
西沢さんの言葉に、僕はなんともあいまいに言葉を濁す。
「そういうわたしも言うほど頻繁じゃないんだけどね。ごはんの時は使うの禁止だし、成績が落ちたらスマホ取り上げって言われてるから、ちゃんと勉強はしないとだから」
「あ、その辺は僕も一緒かな。赤点をとったら次のテストまでスマホ禁止って言われてるんだ」
学園のアイドルも陰キャ男子も、どこの家も子供のスマホ事情は似たり寄ったりみたいだね。
「でもでもやっぱり、連絡しすぎて佐々木くんにウザいって思われたくないから。できればあらかじめ佐々木くんのスタイルを聞いておきたいかなって思うんだけど」
どうも西沢さんにとってこの件は、お付き合いする上でとても重要なことみたいだね。
そもそもの大前提として、僕が西沢さんから連絡をもらってウザいと思うことは皆無だと思うんだけどなぁ。
むしろ頻繁に連絡してもらえたら、それだけで好意を実感できて嬉しくなるはずだ。
でも西沢さんにとってはとても大事なことみたいだし、仕方ない。ここは素直に白状しよう。
「連絡する相手がいないから、あまり使うことがなかったんだよ」
僕はラインの「友だちリスト」を開くと、すっからかんのリストを西沢さんに見せてあげた。
「シバターってのは多分これは同じクラスの柴田君だよね? 教室でもよく2人で話してるもんね。それとこれはご両親? でも気のせいかな? これ3人しか連絡先なくない? クラスのライングループも入ってないみたいだけど」
覗き込んだ西沢さんが確認するように僕を見た。
まるで宇宙人でも見たかのような不思議そうな顔をしている。
「ライングループには入ってないんだ。こういうわけだから、ラインを使う機会はほとんどなかったんだ。『一応』って言ったのはそういうこと」
毎朝予鈴ギリギリに登校し、放課後もすぐに学校を出てまっすぐ家に帰る僕に、家族から連絡があることはほぼほぼない。
そして柴田君とは家に帰ってまで頻繁にやり取りするほどの大親友というわけでもない。
ちなみに柴田君は休みの日とかはずっと家にこもってWeb小説の執筆をしているらしい。
ガンガン書いて上手くなってプロの作家になるんだって堂々と言っている。
同い年なのにもう将来の夢を持っていて、それに向かって努力しているのは本当に凄いと思う。
(学校カーストでは同じように友達がいない陰キャ扱いでも、柴田君の本質は決して陰キャじゃないんだよな)