学校へ行くと靴箱に手紙が入っていた。
「土手で放課後まってます。YY」
 あっ。
 山口せんぱいだ。このブルーの万年筆の筆跡はきっと山口せんぱい。わたしは、踊る心をおさえ、そのメモをスカートにそっと忍ばせた。その日の授業は、窓からみえる海の景色をみながら、山口せんぱいと逢うまでのじかんとなった。社会科教室の窓から、山口せんぱいが、サッカーをしているすがたがみえる。ああ。なんてかっこいいのだろう。先生は、三人しかあてない。松野。松井。松村。その三人と社会科フェチみたいな問題をだして、全問正解が好きだ。ちらっと先生がこちらをみる。目が合う。色が黒くて唇が分厚い。先生は、
「田中、ちゃんと黒板みなさい」
 と注意する。出木杉君がこちらをちらっとみてシャーペンをくるっとまわす。わたしは真面目に前を向く。中学生はいろいろしんどい。いろんなことを学ばなければならない。
 ようやく、帰りのホームルーム。教室とはバイバイ。ひとりで先に走って出ていく。山口せんぱいがまっている土手まで、自転車を飛ばす。これは恋。胸がどきどきする。土手までいくと、山口先輩が本をもって座ってる。あ、やっぱり。山口先輩だー。