『そうさせてもらいます。明日大川君と森本さんに報告しますので、店に立ち寄ってもらえますか?』
『了解です。お客さんが来る前に行きますね』
 では。病院の付き添い、待機、その他俺の知らないいろんなことをやって須崎さんは声からも分かるくらい疲れていそうだった。手術は成功とのことだから、今日はこれで良しとしよう。
 俺も何だか疲れてしまった。

 職場へ戻り課長と森本さんへ報告して、定時で上がった。
 途中コンビニに寄ってビールとピーナッツ、カップラーメンをかごに入れる。ちょっと何か足りない気がする。何だ……そうだ、野菜だ。
 野菜と何となくバータイプのサラダチキンもかごに入れて、会計をした。自分の中のもう一人に買えと言われたような気がしたからだ。
 市役所から自転車で十分ほど、単身者用の小さいマンションの二階が俺の自宅だ。
片付けが面倒くさいので、最低限の家具家電しか置いていない。掃除機はお掃除ロボットちゃんを奮発した。家に帰ると床が綺麗になっているのでおすすめだ。たまにケーブルだとか吸い込んでエラーになっているが。
 レジ袋(エコバッグとかは持たないタイプなんで)をどさりとテーブルに置き、とにかく早く汗ばんだポロシャツを脱ぐ。そのままシャワーを浴びてすっきりしたところでビールのタブをプシュッと開けて一気に半分ほど飲み、げっぷが出たところでいろいろと決意した。
 ビールとカップラーメンは一日おきにしようと。──ああ、それももちろんそうなんだけど!

 大迫さんは須崎さんと同年代か少し上くらいの人だろう。そんな若い大迫さんでも三大疾病のひとつ脳梗塞になるんだ、柘植の木団地の人たちに必要な施設や情報がまだまだたくさんあるということが今回の件でよく分かった。
 もちろん課長はじめ再生課の人はそれを分かっていて、いろんな角度からこの街の再生を考えているのだけど、俺自身まだまだ勉強不足、経験不足だなぁということが身に沁みて分かった。
 急病人が出た時の対処もそうだ。須崎さんも森本さんも落ち着いて自分に何が出来るかを考えていた。
 もし団地祭りの時にそういったことが起きたら?
 俺は巡回係だ。そういったことに出くわすかもしれない。そんな時、冷静に動けるだろうか。
 人との関係を築くってことは、ぬるま湯の中でのことだけじゃないっていうのを、ようやく理解してきている。昔の俺だったら、ぬるま湯に浸かったままだったかもしれないな……、あ。
「カップラーメン伸びてる」
 今晩は、伸びたカップラーメンと野菜とチキンのサラダが俺の晩飯になった。